Marvin Sketchによる分子描画 Ⅱ
二次元の図を三次元的な図に変換
前稿では平面的な分子の描画法を紹介した.今回は二次元の図を三次元的な図に変換する方法を紹介したい.
反応式としてDiels-Alder反応を選択した.シクロペンタジエノン誘導体 (CP) と無水マレイン酸 (MA) を二次元で描いたものが左下の図である.
CPとMAを溶媒に溶かし加熱するとDiels-Alder反応を起こし,[4+2]付加体が得られる..
二次元画像の回転
2つの分子が重なった反応直前図や生成物を描くには,三次元の遠近法を加味する必要があるため簡単ではない.本ソフトを使うと容易に描くことができる.その手順を以下に示した.
CPを選択して,点線の横にマウスカーソルを持って行き,右ボタンを押すとメニューが表示される.表の下方に表示される transformation をクリックすると右側に別表が表示される.上から3番目の Rotate in 3D を選択すると3番目の表が表示されるので,Free 3D Rotationを選択する.
CPをつまんでいろいろな方向に動かしながら,下図のように,斜め上から眺めたように見える状態へ回転する.いろいろ試行錯誤して慣れる必要がある.MAも同様に移動,変換する.
次図はエンド付加のアプローチである.
無水マレイン酸を選択して,鏡像関係の変換(2回)でエキソアプローチの図に変換できる.
F7ショートカット
3D回転は,"F7"にショートカットが用意されている,下図は3D回転した例である.
3D回転の際に表示される長方形のマーク.長方形マークを動かして分子を回転させる.
長方形マークの動きは非常に敏感である.試行錯誤でやり方を習得する必要がある.
分子のサイズが大きくなると3D化構造において遠くに位置する部分が薄れる傾向が強い.
分子の表示法の変更
ViewのStructure Displayを選択して,wireframeをstickに変更すると線幅が大きくなる.原子をBall and Stick, Spacefullにすることも可能である.
ついでに
生成物(環化付加体)の構造も平面構造を回転させて3D的画像へ変換することができるが,生成する画像は環化付加体の3D構造ではなく,原図を斜めから眺めた平面画像である.環化付加体の立体構造を得るには,フェニル,カルボニル,エチレン部位をそれぞれ移動,回転させて部分的修正を行う必要がある.
左図を3D回転させた画像
左図を部分的に修正した画像
各種の化合物について, 1クリックで3D化を実行し, 3D座標を得る方法については次稿で説明したい.
参考資料
Marvin Sketch 基本機能は非商用目的の場合無料で利用することができる.
2021.6.12