#388 クチコミに見られる配慮
田中(2008)では、「みんなのクチコミサイト」のクチコミ調査を通じて、不特定多数の受け手を想定したコミュニケーションにおいて、書き手がどのような言語形式を用いて配慮の意識を表すのかを明らかにしようとしています。
田中によれば、不特定多数に向けたコミュニケーションにおける配慮表現の研究は、ウェブ日記を対象とした岸本(2005)を除くと、ほとんど行われていないのが現状です。分析の視点としては、携帯メールの配慮意識を調査した三宅(2003)や先の岸本(2005)が挙げられており、文末の丁寧度、句点の省略、終助詞「カ・ネ・ヨ」の使用、文末伸ばし、絵記号の種類、追加説明、自称詞、メタ言語といった項目が挙げられています。
田中(2008)自身の研究では、スピーチレベル(丁寧体や普通体など)、終助詞、文末記号、接続助詞「ガ」に着目し、世代別(20代と40代)、投稿媒体(PCと携帯)、評価の違い(高評価と低評価)による変化を分析しています。
スピーチレベルに関しては、全体として丁寧体の使用率が高いものの、20代は40代よりも普通体を多く使用する傾向が見られました。媒体による違いでは、携帯からの投稿の方が「省略」が多く使われています。また、高評価の投稿では「体言止め」が多く見られる一方で、低評価の投稿では「効果があるのかもしれないけど、泡立ちが良くないのと、匂いがちょっと。」や「旦那は何もないのに…」といった「省略」が多く見られました。これらは、他の投稿者などに対する書き手の配慮のあらわれと考えられています。
終助詞については、高評価の投稿で「ネ」や「ヨ」の使用率が高く、低評価の投稿では「カ」が多く使われていました。さらに、低評価の投稿では「泡パックも1分程度試みましたが…」のように、文末の接続助詞「ガ」が多く用いられる特徴が見られました。
文末記号に関しては、「句点」が多く用いられており、特にPCからの投稿や40代の書き手に句点で文章を終える傾向が強く見られます。一方、携帯からの投稿では記号や顔文字が多く使われていました。なお、評価の高低による文末記号の顕著な差は見られませんでした。
これらの分析から、丁寧体や句点といった一般的な他人への配慮に則った表記が多い一方で、世代や投稿媒体、評価の高低に応じて、省略や逆接の接続助詞「ガ」などを用いることで、読み手の共感を得たり様々な立場の読み手を気遣ったりする配慮がなされていることが明らかになりました。
参考
田中弥生, & 独立行政法人. (2008). クチコミサイトにおける世代別・媒体別言語表現の分析. 言語処理学会第 14 回年次大会 (NLP2008) 予稿集, 911-914.
岸本千秋 (2005) 「ネット日記における読み手を意識した表現 ―公開意識との関連から―」 『メディアことば 2 [特集]組み込まれるオーディエンス』 pp.204-231 ひつじ書房.
三宅和子 (2003) 「対人配慮と言語表現 ―若者の携帯電話のメッセージ分析―」 『文学論藻』 77 (東洋大学文学部紀要 56) pp.207-176 (16-47).
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