#386 口コミのパターン
田中(2013)は、良い評価をしている口コミと悪い評価をしている口コミには、談話構造において異なるパターンが存在することを指摘しています。
この研究における構造の分析方法は非常に興味深いものです。詳細は省きますが、具体的にはテクストを基節単位で分割したのち、発話機能(基本的には情報提供を指す「命題」)、中核要素(状況内、状況外、定言要素)、そして現象定位(メッセージによって表現されている出来事がいつ起こったかを、伝達時を基準とした時間的要素)を組み合わせて修辞機能を特定していきます。たとえば、「命題×状況内×現在」であれば「実況」や「自己記述」になり、「×過去」であれば「状況内回想」、「×未来」であれば「計画」といった形に分類されます。
さらに面白いのが、これに応じて1から14段階で出される「脱文脈化指数」です。これは、中核要素の「here(ここ)」の程度と現象定位の「now(いま)」の程度によって、近いものから遠いものまで修辞機能を線上に示した際の指数を指します。数値が低ければ個人的・特定的であり、大きければ一般的・汎用的であることを示します。
分析の結果として、高評価と低評価の口コミでは、開始・終了メッセージの修辞機能および脱文脈化指数に明確な違いがあることが明らかになっています。
たとえば高評価の開始メッセージでは、「体洗いに使っています」「何個もリピしてます!」といった自己の習慣を述べる「自己記述」や「実況」が多く見られます。一方、低評価の開始メッセージでは商品の使用が過去のこととなっているため使いにくく、開始・終了ともに「ダメでした」「あいませんでした」「泡立ちはよかったんですけどね」「使用中止しました」といった「状況内回想」が多く見られます。また高評価の終了メッセージでは、今後もリピートするという「計画」がパターンとして現れます。
また、脱文脈化指数の広がりにも差があり、高評価では指数の差が7〜8程度あるのに対し、低評価では1〜2にとどまることが多いとのことです。論文内では直接触れられていませんが、高評価の口コミのほうがメッセージ数も多く、内容に緩急があるということかもしれません。感覚的にも非常に納得のいく興味深い研究結果だと感じられます。
参考
田中弥生. (2013). 評価の高低によるクチコミサイト 「アットコスメ」 における談話構造の特徴―修辞ユニット分析を用いて―. 神奈川大学言語研究, 35, 1-23.
佐野大樹・小磯花絵(2011)「現代日本語書き言葉における修辞ユニット分析の適用性の検証-「書き言葉らしさ・話し言葉らしさ」と脱文脈化言語・文脈化言語の関係-」『機能言語学研究』6, 59-81.
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[修辞機能][談話構造]