#381 隣接ペアへの志向
高木(2009)を読んでいて、隣接ペアが相互行為を考える上で鍵概念になっているということが分かりました。それだけ人間の志向を表しているものであり、実際、乳児や幼児とのやり取りの中でもそうしたやりとりが観察されるという記述をとても面白く読みました。
また、隣接ペアにおいて、相手に対する「期待」も大切であることが分かりました。これは「条件的適切性(Conditional Relevance)」と呼ばれています。それは、「隣接ペアにおいて、第一部分として理解可能な行為が産出されたという条件のもと(coniditional)、その第一部分の発話タイプと対になりうる第二部分(second pair part)の産出が有意味かつ適切なもの(relevant)となり、規範的に期待される」、そうした、第一部分と第二部分の規範的関係のことを指しています(Schegloff 1968)。
例として挙がっているのが養育者による乳児の「引用」です。4歳の姉が1歳の弟がつかもうとしていた写真を持ち去ってしまった場面で、父親が「〇〇ちゃんと見たいって」と言った後、姉に向かって「はい」と言いながら手を伸ばし、姉は写真を父に渡し、弟の手に渡るのを受諾するというやり取りが紹介されています。
これについては、「乳児の『引用』が、乳児の欲求を『代弁』するものとして提示されている限りにおいて、それは、乳児の欲求を満たすように『要請』する行為として理解され、次の順番において、その行為が向けられた姉が、その欲求に応じる行為を行うことが適切となる。つまり、「要請―受諾」の隣接ペアへの志向が引き出されているのである」と書かれています。
このような相互行為の原型を乳児と姉との間で可能にするという意味で、社会化の過程においても重要だと指摘されています。高木は、「おわりに」で、「人間が、相手が差し出した行為に対する反応としての行為を生み出すことに強く志向する」ということが、隣接ペアの原型で、相互行為の分析の出発点だと述べています。
参考
高木智世. (2009). 隣接ペア概念再訪: 相互行為の原動装置. 認知科学, 16(4), 481-486.
Schegloff, E. A. (1968). Sequencing in Conversational Openings. American Anthropologist,70, 1075–1095.