#379 疑問文をミックスする配慮
8月23日の記事「失語症になった先生『継続の力』はいまも」で紹介されていた、脳梗塞後に言葉が出なくなってしまった方のエピソードがとても印象に残っています。
その記事では、「相手が待ってくれていると思うと焦って余計に話せなくなってしまう」「『何か言おうとしていますか』と聞いてくれると、『はい』『いいえ』で答えられるので助かる」といった切実な声が取り上げられていました。
これは失語症に限った話ではありません。私自身も、相手の回答を待てずに矢継ぎ早に質問を重ねてしまったり、沈黙に耐えかねて自分ばかり話してしまったりと、思い当たる節があって少し恥ずかしくなりました。
この記事で紹介されているような質問は、言語学的に見ると、相手に肯定か否定の答えを求める「極性疑問文」に分類されます。これは確認を求める働きがあり、答える側を特定の回答へ導きやすいという特徴があります。
一方で、「なに」「どこ」といった疑問詞を使う「疑問詞疑問文」は、質問者が答えを特定せずに情報を求めるものです。そのため、答える側にとっては自由度が高い反面、思うように話せない状況では発話の負担が大きくなってしまうのかもしれません。
関連する研究として、李(2024)は中国語の初対面会話における疑問詞疑問文を分析しています。それによると、単なる「情報要求と情報提供」の1対1のやり取り(隣接ペア)で終わることは少なく、そこから関連する発話が続いていくケースが多かったそうです。さらに、現場では疑問詞疑問文と極性疑問文などを巧みに組み合わせた質問も見られたといいます。
ひとくちに「疑問文」といってもその種類や役割は様々です。最初の失語症の方のお気持ちを考えると、どのような形式で相手に問いかけるかという点も、思いやりのあるコミュニケーションにおける大切な選択肢なのだと実感しました。
参考
李昱琨. (2024). 初対面の中国語会話における疑問詞を用いた質問応答の相互行為分析―質問応答連鎖後方拡張の 4 パターン―. 言語情報科学, 22, 19-35.
https://www.asahi.com/articles/DA3S16531706.html
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[隣接ペア]