#256 ポリアンナの原則
Leech(1983)によると、「ポリアンナ仮説(Pollyanna Hypothesis)」とは、人々が人生の暗い側面よりも明るい側面を見ようとする心理的な傾向を指します。元々は心理学の用語ですが、Leechはこの定義から新たなポライトネスの原則として「ポリアンナの原則(Pollyanna Principle)」を導き出し、「会話の参加者はより楽しいトピックを好むものだ」と説明しています。
例えば、日常的なスモールトークで「How are you?」や「Hey, how's it going?」と聞かれた際、たとえ実際にはトラブル続きの毎日であっても、「Bad」と答える人はほとんどおらず、「Good」と答えるのが一般的です。こうした身近なやり取りにも、ポリアンナの原則が表れています。
ここまでの背景説明は Podaná の解説を参考にしていたのですが、実際にLeech(1983: 147)の該当箇所の記述を確認してみると、以下のように書かれています。
"To elucidate the motivation for litotes further, I shall call upon yet another principle: one that has been acknowledged by psychologists under the title of the 'Pollyanna Hypothesis.' This states that people will prefer to look on the bright side rather than on the gloomy side of life, thus resembling the optimistic heroine of Eleanor H. Porter's novel Pollyanna (1913).(訳:緩衝法[控えめな表現]の動機をさらに解明するために、もう一つの原則を引くことにする。それは、心理学者たちによって「ポリアンナ仮説」という名称で認められてきたものである。この仮説は、人は人生の暗い面よりも明るい面を見ようとするものであり、その姿はエレナ・H・ポーターの小説『ポリアンナ』(1913年)の楽観的なヒロインに酷似している、と主張している。)"
このようなポライトネスの意識に基づく婉曲表現を使えば、相手に不快感を与える事象をうまく覆い隠す(disguise)ことができます。たとえば、「解雇された(dismissed)」と直接言う代わりに「人員余剰となった(made redundant)」と言い換えるなど、より攻撃性のない(inoffensive)穏やかな表現を選ぶのがその一例です。
また、「a bit」や「a little」を使って不快感やネガティブさを和らげる手法もあります。たとえば、「The paint was a bit dirty.(ペンキが少し汚れていた)」という使い方が挙げられます。「a little」はポジティブな内容には付きにくく、ネガティブなニュアンスを緩和するために使われるため、「She is a little too young for the job.(彼女はその仕事には少し若すぎる)」と言うことはできても、「She is a little young enough for the job.」とは言いません。
このように、相手や場への配慮から言葉を工夫することについて、Leechは "The influence of the Pollyanna Principle causes both optimistic overstatement and euphemistic understatement. (ポリアンナの原則の影響によって、楽観的な誇張表現と、婉曲的で控えめな表現の両方が生み出されるのである)" と締めくくっています。
参考
Leech, G. N. (1983). Principles of Pragmatics. Longman.
Podaná, A. (2013). Pragmatic Principles in Informal Interaction [Master's thesis, University of South Bohemia in České Budějovice].
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[ポリアンナの原則] [婉曲法][ヘッジ][ポライトネス]