#355 ファミコン敬語
前々回からの続きとして、今回は内藤篤志氏の担当節である「敬語の変化」について取り上げます。
本章では、昭和21年連載開始の『サザエさん』と平成15年の『コボちゃん』という2つの漫画作品を比較し、時代による敬語のあり方の変化を考察しています。『サザエさん』では、母・フネが我が子3人に対して敬語(丁寧語的な用法や自身の品位を保つための敬語)を使っていたり、フネやサザエが波平に対して敬語を使っていたり(当時の男尊的な風潮のあらわれ)、サザエが近所の子供たちにも丁寧語で接していたりと、現代から見ると特徴的な描写が多く存在します。一方の『コボちゃん』では、義理の両親などを除いて家族間では常体語が用いられており、現代人の日常感覚としっくり重なります。このことから、『サザエさん』の描く敬語表現もまた、当時の人々の感覚と一致していたのだろうと推察できます。
また、いわゆる「ファミコン敬語(ファミレス・コンビニ敬語)」についても触れられています。例えば「お会計のほう、1万円になります」の「〜のほう」は、物事をぼかしたり遠まわしに言ったりする用法であり、慎み深く表現しようとするあまり多用される傾向があります。
さらに「コーヒーになります」といった表現についても、「ございます」が使われなくなったことを受け、「です」よりも丁寧さを出そうとして「なります」が選ばれるようになった点が要因として挙げられています。くわえて、ファミリーレストランは専門店ほど高級ではないため、「ございます」という最上級の敬語で接客する必要性を感じにくいという意識も働いている、という考え方が紹介されています。
内藤氏は最後に、「『〜のほう』も『〜になります』も、慎み深く言おうとした結果が、不自然な日本語になってしまったものと理解することができる。ここでも、環境や状況の変化がコミュニケーションの資源として敬語の使用に影響を与えているのである」と締めくくっています。
コンビニ敬語やファミコン敬語などの表現については、今後機会があればさらに詳しく掘り下げてみたいと思います。
参考
内藤篤志. (2006). 4. 敬語の変化. 井上逸兵・他, コミュニケーションの生態系: 現代日本の若年層の言語使用を中心として. 『慶應義塾大学日吉紀要. 言語・文化・コミュニケーション』, (36), 7-9.
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