#343 男消し構文について
昨日の朝日新聞朝刊の「Re:Ron」から、『「男消し構文」日韓のメディアに』というタイトルで面白い記事を見つけました。
「男消し構文」とは、報道において加害者や被害者が女性だと性別が強調される一方で、男性は性別を書かれないという非対称な表現を示す言葉だそうです。
実はこの傾向は韓国にもあるそうで、編集部の高室氏がX(旧Twitter)での事例を挙げています。ハングルから日本語に自動翻訳された投稿の中に、「ゴルフクラブで祖母・母親を暴行した20代に実刑」という見出しに対して「もしかして『20代男性』と書くと指が折れるんですか?」というコメントがあったそうです。この「指が折れる」というのは、おそらく「男性」とタイピングすることすら打ち疲れるほどの労力である(「骨が折れる」の指バージョンでしょうか)ということを意味していると思われます。
この記事では、メディア人類学者のキム・キョンファ先生がこの構文について解説されています。先生は、新聞社や業界全体だけでなく、記者個人としても「自分が無意識のうちに特定の価値観や立場を『標準』にしていないか」と省みる必要があると指摘されています。
「20代男性に実刑」ではなく「20代に実刑」とし、もしこれが女性だった場合に「20代女性に実刑」と表記されるのだとすれば、何も書かないことが「無標(unmarked)」であると言えます。つまり、男性が無標で、女性が「有標(marked)」として扱われている、と理解することもできます。
堀田先生の#550の記事では、有標・無標について、「音韻論では専門的な使われ方をするが、形態論や意味論では直観的な『ありやすさ』『普通さ』『自然さ』の点での対立を標示するための道具として使われる」と書かれています。
ネットで見つけた例には、「女子高校生が夜道で襲われる 35歳無職逮捕」といった記事がありました。
被害女性が加害者よりも強調されること(他にも「女教師」などの表現も同様です)を良く思わない人々によって「男消し構文」と叫ばれているのだと思いますが、こうしてしまうと「男性が加害者になるのが普通(=無標)」と言いかねない点において、男性側からも批判が来る可能性があるのではないか、とも感じました。
参考
https://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/2010-10-29-1.html
https://sukusuku.tokyo-np.co.jp/birth/102671/
https://www.asahi.com/articles/ASV7H1PZ0V7HULLI00SM.html