#332 ソーシャルメディア活用の実態
三井・辻本(2025)では、政令指定都市の行政広報におけるソーシャルメディアの活用状況を調査し、その特徴やチャネルごとの特性を明らかにしています。
各都市におけるTwitter(現X)、Facebook、Instagram、LINE、YouTubeのほか、ブログ、note、TikTokなども含めて調査が行われていますが、印象として、これらのツールのいずれも導入していないという自治体は一つもありませんでした。論文内では、各メディアの開設時期や、アカウントがどれだけの住民を網羅しているかを示す「人口カバー割合」などが分析されています。なお、チャネル特性の分析においては、個別のやり取りが多いLINEや、動画共有の性質が強いYouTube、TikTokは除外されています。その上で、それぞれのチャネルがどのような内容を発信しているのか、また、分類ごとに月平均でどの程度投稿されているのかといった投稿頻度の観察が行われています。
調査の指摘の中で特に心に留めておきたいと感じたのは、双方向性が謳われるソーシャルメディアであっても、行政の現場ではそれを実現することが実際には難しいという点です。論文では、「行政広報においてソーシャルメディアを活用する際には、ブロードキャスト(一斉配信)的な役割を基本としつつ、双方向的な役割については行政リソースを考慮した上で簡易的な導入を進めるか、広聴部門が個別に担うなど、目的に応じた運用を検討する必要がある」と述べられており、運用のあり方をしっかりと検討する必要性が示唆されています。
また、アカウントの開設時期については、2020年以降に特にInstagramの開設が進んでおり、Twitterについても2020年や2021年の開設が多く見られます。これには、コロナ禍における情報発信への影響も挙げられています。
各チャネルの特性に目を向けると、Twitterでは「広報」、Facebookでは「文化・特色」および「広報」、Instagramでは「文化・特色」に関する投稿が多く見られます。さらに、Twitterは投稿頻度が高く、自治体ごとのばらつきも大きいことから、状況に応じてタイムリーに発信する「適時性」の高さが示唆されています。
これらの結果を踏まえ、論文では行政広報の活用フレームワークが提示されています(以下図)。それによると、アカウント数を絞って広報部局がガバナンスを持って運用する「集中化戦略」がある一方で、速報性を重視して各担当部局がそれぞれ管理・運用する「多角化戦略」があります。その上で、広報チャネルの特性に基づいてどのメディアを使うかを選定し、さらにユーザー側の利用動機も踏まえて選択することで、より効果的な情報発信が可能になると結論づけられています。
*指定都市とは、地方自治法で「政令で指定する人口50万以上の市」と規定されている都市のこと。
参考
三井祐介, & 辻本篤. (2025). 行政広報のソーシャルメディア活用とメディア特性について 政令指定都市の SNS 運用の比較分析. 公共コミュニケーション研究, 10(1), 31-46.
https://www.siteitosi.jp/about/designated.html
三井・辻本(2025, p.44)