#331 企業のメディア活用にまつわるトピック
前回の続きとして、今回は竇(2014)が指摘する「企業の広報活動におけるオンラインメディアの利用」について、現在(注. この当時の現在、以下も同様)研究が進められている3つの主要なトピックを詳しく掘り下げてみたいと思います。
まず1つ目のトピックは、「パブリックとの関係構築」についてです。
そもそも広報(パブリック・リレーションズ)の重要な役割のひとつには、株主や社員、消費者、地域住民といった「パブリック」と良好な関係を築き、それを維持することが挙げられます(猪狩 2007)。そのためには、企業側が一方的に発信するだけでなく、パブリック側の声を吸い上げて企業活動に反映させる「双方向的なコミュニケーション」が欠かせません(Grunig, 2001)。
これまでは、Kent and Taylor(1998)の「対話的コミュニケーション理論」をベースに、「対話の循環」「情報の有用性」「再訪問の促進」「インターフェイスの利便性」「利用者の保持」という5つの観点から分析される傾向にありました。しかし、これは主に従来のウェブサイトを念頭に置いたものです。SNSをはじめとする新しいオンラインメディアに対応する枠組みとして、現在はHon & Grunig(1999)の「関係メンテナンスの方略と成果」が注目されています。これは、「肯定性」「開放性」「保証行動」「ネットワーク」「課題の共有」「信認・関係への配慮」という6つの方略や、「信頼性」「満足度」「参加意欲」「影響の相互性」「利益関係性」「共有関係性」という6つの成果の尺度を用いて、企業とパブリックの関係性を測定する指標として活用されているそうです。
2つ目のトピックは、「企業が不祥事などを起こした際の危機・コミュニケーション」についてです。
かつてはマスメディアを介して企業が情報を開示する「1対多(one to many)」の情報伝達が主流でした。しかし、ソーシャルメディアが普及した現代では、一般の人が発信したオンライン情報をもとに報道がなされるケースが増えるなど、パブリック側から情報が提供されるモデルへの転換が進んでいます。
それに伴い、現代の広報には「多対多(many to many)」の情報伝達モデルの理論構築が求められています。また、年齢層によって利用する情報源やその信頼度(公共機関を信じるか、一般人のブログやSNSを信じるかなど)が異なる点にも注意しなければなりません。「危機に関する情報をどのメディアで発信すべきか」という問題や、高い情報拡散力を持つ「インフルエンサー」への注目など、危機管理におけるメディア選定の重要性が議論されています。
最後の3つ目は、「広報活動におけるオンラインメディアの導入」に関するパブリックの反応です。
企業がオンラインメディアを利用することに対して、生活者がどう受け止めるかについての調査も進んでいます。たとえば、SNS等を通じた募金活動などは、個人のパーソナルスペースへの介入と捉えられ、かえってマイナスに働いてしまう可能性なども指摘されているそうです。
今回の論考を読んで、情報を発信・利用する企業側が考慮すべき点は非常に多いと感じました。と同時に、私たち受け手の立場としても、メディアごとの特性や違いをしっかりと意識しながら情報に接していく必要があると考えさせられる内容でした。
参考
竇雪. (2014). 広報活動におけるオンラインメディアの利用: 海外諸国の研究動向と今後の課題. メディア・コミュニケーション: 慶応義塾大学メディア・コミュニケーション研究所紀要, 64, 137-146.
猪狩誠也 (2007) 「広報・パブリックリレーションズとは何か」猪狩誠也(編著)『広報・パブリックリレーションズ入門』宣伝会議, 12-39頁。
Grunig, J. E. (2001). Two-way symmetrical Public relations: past, present, and future. In R. L. Heath (Ed.), Handbook of Public Relations. Sage Publications.
Hon, L. C., & Grunig, J. E. (1999). Guidelines for measuring relationships in public relations. Gainesville, FL: Institute for Public Relations.
Kent, M. L., & Taylor, M. (1998). Building dialogic relationships through the World Wide Web. Public Relations Review, 24(3), 321–334.
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