#328 色々なことを考えて紡ぎだされることば
昨日の記事に引き続き、言語の起源(下)「話せる能力 賛美より理解を」を拝読しました。
この記事では、まず「象徴性」と「社会性」という二つのキーワードが挙げられています。洞窟壁画や手形、装飾品などの形跡から、古人類にも象徴的な行動があった可能性が議論されています。そのなかでもホモ・サピエンスは、恣意的な記号を組み合わせ、それを集団で共有する能力がより発達していたと指摘されています。この「形や音と意味の結びつきが固定的なものにとどまらず、シンボルとして柔軟に使える点」こそが、言語の大きな特徴であると言えます。
また「社会性」については、絶滅したネアンデルタール人とホモ・サピエンスとでは、集団の規模や集団間ネットワークの大きさが異なり、社会的な協調の深さに違いがあったのではないかと指摘されています。
岡ノ谷先生は、ホモ・サピエンスの脳神経系に関連する遺伝子に突然変異が起き、高い認知能力を獲得したとする「認知革命」の説に対して、「言語の成立は一瞬の出来事ではなく、遺伝と文化が相互に影響し合う、長く連続的な過程だったと考えている」と主張されています。つまり、言語を使うことが生物として特別かどうかを議論するのではなく、ほかの自然界では見られない複雑なシステムを、人類がどのようにして持つに至ったかを正確に理解することが重要なのだと述べています。
最後に、言語と動物のコミュニケーションの違いとして、自分自身の行動を認知する機能である「メタ認知」が取り上げられています。これによると、私たちは単にしゃべることだけでなく「しゃべらないこと」も重要視しており、しゃべる時にも自分が言いたいように言うのではなく、「こう言ったら相手はどう思うか、社会はどう受け止めるか」を常に考えながら発言しているということです。
これに対して動物のコミュニケーションは、「信号によって相手の行動を変え、自分や相手、あるいは双方に利益をもたらすもの」として理解できます。うそや小説、空想、あるいは未来の計画など、現実にはない仮想の事柄を語れる能力こそが、言語の本質的な機能の一つなのだと深く実感させられました。