#322 ソーシャルメディアのことば
日本言語学会(@桜美林大学)のワークショップとシンポジウムに参加しました。
ソーシャルメディアの言語的特徴として、落合さんのご発表では、ソーシャルメディアの言語的特徴について「話しことばと書きことばの中間」と捉えるのではなく、話しことばの特徴が「文体的特徴」に、書きことばの特徴が主に文の示し方に関する「言語規範的特徴」にそれぞれ対応して成立している、という提案がなされていました。
たとえば、ラインの「A:行き方はどうする?/B:夜行バス(改行)新幹線」というやり取りでは、同じ吹き出しの中でBが改行する形で、並列助詞をつけずに選択肢が並べられています。これは「話すように書いている」側面のほか、書き言葉の「箇条書き」の規範が背景にあることが指摘されていました。
また、ソーシャルメディア特有の表現が生まれる背景には、特定の表現形式の使用範囲が拡張されるという、語形成レベルの新奇性との連続性があるとのことです。具体的には、「〜み」という接尾辞が「わかりみ」だけでなく「可愛い子には旅をさせよみ」のように句や文のレベルにまで拡張される現象が挙げられていました。
さらに「〜すぎて草」「〜すぎて爆散」といった表現も取り上げられました。これらは「て形(すぎて)+名詞(草・爆散)」の形をしていますが、日本語記述文法研究会(2008, 2009)の「テ形に感情を表す述語が後続する場合、原因・理由の解釈になる」という原因・理由の解釈が適用されて成立している、と解説されていました。
また、こうしたソーシャルメディアの独自表現が生まれる契機として、他者の注意を引いて共有されたいという発生動機があり、心理的距離の近い関係性の中で模倣・再生産されることで定着していくというプロセスの説明もありました。
最近出された本『入門 デジタルメディアの言語研究』もしっかり読み込み、咀嚼して、またここで取り上げたいと思います。
参考
日本言語学会第172回大会(2026年6月), 公開シンポジウム「オンライン上で変わる言語と言語研究」, 落合哉人(国立国語研究所准教授)「ソーシャルメディアは文法をどのように変えるか?:新しいことばの生産と流通について」
日本語記述文法研究会(編)2008『現代日本語文法6 第11部 複文』くろしお出版.
日本語記述文法研究会(編)2009『現代日本語文法2 第3部格と構文 第4部ヴォイス』くろしお出版.
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