#319 言語の消滅に関わる3M?
大学内で他の先生のご研究の発表を伺う機会がありました。ある地域の方言について、そのアクセント体系を記述されているとのことだったのですが、その後のディスカッションで、恥ずかしながら私の知らなかった情報をいろいろと得ることができましたので、こちらにまとめておきたいと思います。
ひとつは、その先生が収集・記述されている方言が、いわゆるメジャーなものではないということです。その方言を話す方との会話だけでなく、地域の昔話の資料などもデータにされているそうですが、お話を伺っていると、こうした地域方言というのは明確に区別できるものではなく、無数に存在しているのだと思わされました。
また、ディスカッションの中で、それとは対照的によく知られている地域方言の話題が出た際、先生が「ユネスコのお墨付きをもらっている方言」と表現されていたのがとても印象に残りました。気になって調べてみたところ(これも当たり前の知識かもしれませんが)、ユネスコ(国連教育科学文化機関)が2009年(平成21年)2月に発表した「 Atlas of the World's Languages in Danger(消滅の危機にある世界の言語地図)」の第3版に、世界で約2,500に上る言語が消滅の危機にあるとして掲載されていることを知りました。日本国内からも、以下の8言語がそれぞれの危機の度合いとともに掲載されています。
【極めて深刻】 アイヌ語
【重大な危機】 八重山語、与那国語
【危険】 八丈語、奄美語、国頭語、沖縄語、宮古語
ユネスコの立場も非常に興味深く、「言語」と「方言」を区別せず、すべて「言語」として統一して扱っているそうです。
さらに、こうした方言が消滅する可能性の理由として、ドイツやフランスを対象にご研究されている先生が「3つのM(3M)」を挙げられていたのも面白く感じました。それは、教育的な影響である Mother(母親)、標準化や均質化を促す Media(メディア)、そして人々の移動を表す Mobility(モビリティ)の3つを指すそうです。簡単に調べた限りでは、この3つをひとまとめに「3つのM」と呼ぶ文献は見当たりませんでしたが、それぞれ言語の危機を語る上ではなじみのある要素です。
お話を伺いながら、リアルな言葉を記述し、その揺らぎを見つめる「方言学」という学問もまた、非常に魅力的だなとしみじみと感じた時間でした。
参考
https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kokugo_shisaku/kikigengo/index.html
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