#317 ほめの役割
小玉(1996)では、対談インタビューにおける「ほめ」の機能について検討されています。そこではTannen(1989)を引用し、会話が成立するためには話し手だけでなく聞き手の積極的な参加が必要不可欠であるとした上で、その具体的な参加の方法として相槌や繰り返し、そして「ほめ」が挙げられています。
実際の例として、ホストが「ネーミングもふるってますね」「すごいな」などと褒めて反応するケースが紹介されています。このように、ホストがゲストの発言に対して相槌のように繰り出すほめは、ゲストの話をさらに促進させ、展開していくうえで重要な役割を担っています。また、相手をほめて認める行為そのものが、お互いの連帯感を強めることにもつながります。
さらに、数のうえでは少なくても、ゲストからホストに対してほめが使われることもあります。これは、ホストが振った話題に対して肯定的な評価を下すことで、話題の展開に協力的な姿勢を見せているのだと言えます。もしゲストとホストが親しい間柄であれば、エピソードを一緒に作り上げる「共同話者」となり、会話の盛り上がりが最も感じられる場面にもなります。
また、対談中には相手の「面子」をケアする場面も見られます。たとえばゲストが自分を卑下したときには、ホストがほめることで相手の面子を回復させることがあります。また、ゲストがつらい時期のエピソードを語った際、ホストも自身の似たような経験を重ねて話すことで、ゲストの面子を回復するような「補償のストラテジー」が見られることも指摘されています。
もう一つ興味深いのは、相手からのほめに対して「ほめ返す」ケースです。「中島さんっておしゃれでかわいい人だね」というホストのほめに対し、ゲストが「ありがとう。河島さんだって、いつも同じ男性的な服装で決めてるわ」と応える例が挙げられています。このやり取りをきっかけに、次の話題が服装の話へと移っていくことから、ほめ返しが「話題の転換」に貢献していることが分かります。ここには、ほめをそのまま受け取るのを避ける「回避のストラテジー」も関係していると言えそうです。
一言に「ほめ」といっても、実際の会話の中ではこれほど多様な役割を果たしているのだと、改めて振り返ることができました。
参考
小玉安恵(1996)「対談インタビューにおけるほめの機能(2)――会話者の役割とほめの談話における位置という観点から」『日本語学』15巻6号、明治書院
Tannen, D. (1989) Talking voices: repetition, dialogue, and imagery in conversational discourse, Cambridge University Press.