#316 アナウンサーに教わる解説者
授業内でスポーツの実況解説を取り上げ、そこから観察できる日本文化の特徴について考えました。具体的には、専門家や有識者である解説者とアナウンサーの間にある上下関係や、お互いの立場を「わきまえる」関係性についてです。すると、数人の学生がコメントシートに「今回のワールドカップでの本田圭佑さんの解説が話題になっている」と書いてくれました。
私自身は本田さんの解説をじっくりとは聞いていなかったので、どのようなものだろうと昨日のチュニジア戦の放送を心待ちにしていました。そんな折、昨日の朝刊にまさに多々良先生が本田さんの解説について見解を述べている記事を発見し、思わず嬉しくなってしまいました。
記事によると、本田さんの解説がこれほど共感を得やすい理由について、次のように書かれています。本来のスポーツ実況は「質問するアナウンサーに解説者が教える」という構図が基本です。本田さんのスタイルはそこから外れているように見えますが、ワールドカップという特殊な舞台だからこそ、視聴者の共感を得やすい背景があるといいます。普段はサッカーを見ない層も多く視聴するため、専門的な解説よりも、まるで一緒に試合を体験しているかのような視点が好まれる部分があるようです。
確かに、先日のスケートボードの解説でもそうでしたが、最近はアナウンサーの方がむしろ詳細な情報を握っている場面が目立ちます。昨日の試合でも、「あと4点入れればワールドカップにおける日本史上最高得点になる」というデータや、選手の詳細な名前や経歴などは、本田さんがアナウンサーから教わる形で進んでいました。それに対して本田さんが「マジですか、それなら5点目指したいですね(ニュアンス)」と発言するなど、これまでの「解説者とアナウンサー」の立場が逆転したような、新鮮な雰囲気を感じました。
また、多々良先生はオランダ戦での解説を振り返り、本田さんが「(オランダの選手が)うざい」「ファウルやん」と言ったり、飲水タイムに「これなんすか?」と尋ねたりした場面を挙げていました。
「うざい」という表現については「失礼だ」という意見もあるものの、選手たちの間では「相手の能力を認める(手強い)」という意味でも使われると説明されています。それが現役に近い選手目線ならではの言葉の発信として、大きな目新しさにつながっているようです。
たしかに「うざい」という一言も、文脈によってその意味合いが大きく変わるのだなと、言葉における文脈の重要性を改めて実感させられた一日でした。
参考
本田圭佑さん解説、共感のワケ 識者「一緒に体験、疑問も代弁」 サッカーW杯北中米大会. (2026年6月21日). 朝日新聞, 朝刊33面.
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