#309 書く力とは
渡辺雅子さんがお話しされている記事に触れる機会がありました。そこで語られていた「アメリカ、フランス、日本における小論文の書き方や作文教育の違い」が非常に興味深かったので、今回はその内容を書き留めておきたいと思います。
渡辺さんによると、小論文の書き方には国ごとの歴史や社会背景が色濃く反映されており、明確な違いが現れるそうです。まずアメリカ式は、「導入→本論→結論」というお馴染みの構成で主張を展開します。これは経済や合理性を重視する国ならではの、効率的かつ簡便に相手を説得するための形と言えます。
一方、フランス式は「ディセルタシオン」と呼ばれる伝統的な型が用いられます。概念の定義や問題提起から始まり、「一般的な見方(正)」と「それに反する見方(反)」を提示した上で、その2つを総合した「第三の見方(合)」へと論証を進めていきます。結論では、さらに新しく見えてきた課題まで提示するのが特徴です。この背景には、フランス革命などで多くの血が流されてきた歴史があり、悲劇を繰り返さないために「熟考して判断できる思考の型を身に付けるべきだ」という強い考え方があります。
そして日本式は、自分の主張を一方的に通すのではなく、まずは別の見解にも理解や共感を示した上で、最終的に「やはり自分の主張が正しい」と結論付ける書き方が一般的です。これは、異なる意見を持つ相手への気遣いや調和を大切にする、日本らしい型だと言われています。
学校での「作文教育」のアプローチも異なります。アメリカでは、手紙や広告、製品仕様書といった生活に直結する実用的な12ほどのジャンルに加えて、文学ジャンルの書き方を学び、それぞれ訓練を積んでいきます。必要に応じてこれらを臨機応変に書き分けられるようにすることが目的です。
フランスではさらに徹底しており、小学校段階で文法、中学校で論理学、高校で修辞学(レトリック)の技法と思考法を学び、高校卒業までに先ほどの「ディセルタシオン」を書けるようになることを目指します。
一方で日本を見てみると、学校での論理的な書き方の指導は少なく、社会に出るまでにどのような「書く力」を身に付けさせるべきかという目標が、国全体としてまだはっきりしていないと言います。
渡辺雅子先生は、真の「書く力」について次のように定義されています。それは、「自分の言いたいことを相手に誤解なく伝えられる力」であり、同時に「型を知り、理解して、目的や意図に応じてその型を使い分けられる力」のことです。
実は渡辺先生ご自身も、かつて留学先のアメリカで提出したエッセーが「型に沿っていない」という理由で「評価不能」とされてしまった経験があるそうです。しかし、その後にしっかりと現地の「型」を学んで書いたところ、一気に評価が上がったという実体験に基づいた言葉だからこそ、非常に説得力があります。
今回ご紹介した内容は、YouTubeチャンネル「ゆる言語学ラジオ」でも詳しく紹介されていましたので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
参考
https://www.asahi.com/edua/article/14591711?p=3
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