#303 上からの変化か?
昨日の新聞を読んでいたところ、4月17日の気象庁の発表として、最高気温が40℃以上の日の名称が「酷暑日」に決定したという話題が再び取り上げられていました。
気象庁の実際の発表文書を見てみると、2月27日から3月29日にかけてホームページで行われたアンケートには、なんと47万8,296名もの回答が寄せられたそうです。まず、その参加人数の多さにとても驚きました。
同時に、寄せられた他の候補も興味深いものばかりでした。結果として「酷暑日」が20万票以上を獲得して群を抜いての1位となり、2位の「超猛暑日」の6.5万票に大きな差をつけています。その後に続く候補にも必ず「暑」という漢字が入っており、「極暑」「炎暑」「烈暑」「激暑」「厳暑」など、暑さの程度や炎のような情景を伝える文字が並んでいました。どれもイメージが湧きやすく、読んでいるだけで熱くなってきそうなほどです。
また、得票数には届かなかった「その他」の自由回答も面白く、思わず見入ってしまいました。たとえば「汗日暑日暑(おそらく『あせびしょびしょ』でしょうか)」や、「自宅待機日」というもはや願望が漏れ出たようなもの、ほかにも「サウナ日」「鬼暑日」「沸騰日」といったユニークなアイデアが並んでいました。
最終的に「酷暑日」に決まった背景について、発表文書には「最も多くの支持を集めるとともに、有識者からも社会的にもなじみがあり、日本語としても適切である旨の意見を多くいただいており、名称として最も適切であると判断した」と記されています。
ふと気になったのは、こうした省庁のような公的機関による名称の決定は、「上からの変化(change from above)」なのだろうか、それともアンケートという一般の声を反映しているという意味で「下からの変化(change from below)」なのか、あるいはその狭間にあるものなのだろうか、ということです。
堀田先生のブログ記事(#4956)によると、Trudgillの用語辞典(2003)を引いた上で、言語変化における「上から」「下から」について解説されています。そこでは、前者の「上から」は話者が意識的に言語行動を選択している場合を指し、後者の「下から」は無意識のうちに起こる変化を指すとされています。さらに、これらは必ずしも社会階層や地位の上下をそのまま反映しているわけではない、ということにも触れられています。
この定義をあてはめて考えてみると、今回の件は社会全体の言語変化というほどの大きな規模ではないにせよ、人々が「意識的に言葉を選んで変えていく」というプロセスを踏んでいるため、性質としては「上からの変化」に近いと言えそうです。
参考
気象庁. (2026年4月17日). 最高気温 40℃以上の日の名称の決定について [PDF]. https://www.jma.go.jp/jma/press/2604/17a/20260417_40degree_name.pdf
朝日新聞. (2024年8月3日).(ニュースでメキメキ 読み解く力)気温40度以上、「酷暑日」と命名
https://www.asahi.com/articles/DA3S16478615.html
堀田隆一. (2022年11月21日). #4956. 言語変化には「上から」と「下から」がある. hellog~英語史ブログ.
https://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/2022-11-21-1.html
Trudgill, P. (2003). A Glossary of Sociolinguistics. Oxford University Press.
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[名付け] [上からの変化]