#299 一緒に作る
東(2009)の「精神療法の英語」というセクションでは、セラピストとクライエントが互いに歩み寄った発話をする「スピーチ・アコモデーション」の例として、「2人で1つの文を作り上げる」という現象が紹介されています。東によれば、聞き手が相手の話を完結させることは、相手の話に自分を合わせていくことであり、それが実際にできると示すことにもなります。これにより、知識や経験を共有している感覚を相手に与えられるため、お互いの親近感を深めるための効果的なスタイルだと言及されています。
実際、英語のカウンセリングの例では、セラピストが「Boy, you sure talk about him in...(本当に彼のことを~な風に話すよね)」と切り出したのに対し、クライエントが「a negative way(否定的な風に)」と続けて文を完成させています。それに対してセラピストも「Yeah.」と応じ、補われた内容に同意しています。
このような発話の共同構築に関して、宮永(2025)は日本語とフランス語の対照分析を行っています。この研究は、第二言語を学ぶ際に雑談へ加わることが難しいという課題を背景に、話し手への理解や共感を示したり、聞き手として会話へ積極的に貢献したりするための手段の一つとして、発話の共同構築に着目したものです。これは日本語や英語だけでなく、ロシア語、フランス語、中国語、ベトナム語など、さまざまな言語で見られる現象であり、どの言語においても話し手への理解や共感を示すという点で共通していることが指摘されています。
具体的な日本語とフランス語の傾向については明日詳しく触れたいと思いますが、会話を一緒に作り上げることが相手との心的距離を縮める大切な手段であるということは、改めて心に留めておきたく思います。
参考
東照二. (2009). 社会言語学入門<改訂版>: 生きた言葉のおもしろさに迫る. 研究社.
宮永愛子. (2025). 発話の共同構築に関する日仏対照分析―フランス語学習者と日本語学習者の会話教育を視野に―. 語用論研究, 27, 85-104.
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[発話の共同構築] [アコモデーション理論]