#287 話題開始表現
田中(2018)では、会話の中で新しい話題を導入する際に使われる「話題開始表現」に注目しています。具体的には、「あ」などの間投詞、「でも」などの接続詞、「なんか」などの副詞やそれに準ずる連語(話題開始のための談話標識)が挙げられています。これらは、その後の談話がどう展開するかを聞き手に示唆したり予測させたりする上で有効なものですが、日本語学習者にとっては習得が難しいとされています。そのため同研究では、それぞれの表現が聞き手にどのような情報を伝達しているのか、その分類を試みています。
この分野の先駆的な研究として紹介されているのが、村上・熊取谷(1995)です。彼らは、後ろに続くトピックの開始部に見られる「結束性表示行動」のうち、言語表示の分類を行っています。具体的に引用されている分類を見てみると、以下のようなものがあります。
「あ」「思い出した」「もしかして」などの【認識の変化を表すことば】
「ねえ」「知ってる?」などの【相手に働きかけることば】
「でも」「話は変わるけど」などの【談話標識やメタ表現による談話展開の示唆】
「月曜日ね」「Qさんて」などの【後続トピックのフレームの提示】
「教師って」などの【トピックそのものの提示】
話題を開始するだけでもこれほどのバリエーションがあるのかと、普段これらを無意識に使っている身として非常に興味深い分類でした。聞き手の理解を助けるために、こうしたちょっとした挿し言葉が役立っているのだと思うと、一つひとつの表現がとても大切に思えてきます。同時に、前回の記事で触れた「談話開始表現」「談話標識」「メタ表現」という概念は、やはりお互いにかなり近い距離にあるのだな、と改めて実感させられました。
参考
田中奈緒美. (2018). 「談話理解の視点から見た話題開始のための談話標識の分類」『日本語教育』170, 130–137.
村上恵・熊取谷哲夫. (1995). 「談話トピックの結束性と展開構造」『表現研究』62, 101–111.
keywords
[談話標識] [メタコミュニケーション]