#280 メディアそれぞれの特性
引き続き、橋元先生の論文の中から、特に印象に残ったキーワードや論点についてまとめておきます。
論文の中では、2024年の兵庫県知事選挙が取り上げられています。パワハラなどの疑惑を告発する文書を発端に、議会から不信任を突きつけられた前知事が選挙で再選を果たすこととなりましたが、その背景にはSNSの活発な利用がありました。橋元先生は、この選挙におけるSNSの活用を論じる中で、SNSが持つ特有の性質について触れています。
まず指摘されているのが、SNSの「匿名性」です。匿名であることで発言への責任感が失われやすく、年齢や身分、肩書といった「社会的キュー(手がかり)」が見えづらくなります。その結果、他者への攻撃性が増しやすくなるという特徴があります。
さらにSNSでは、同じ憎悪の対象を持った人々が繋がり、互いの感情をますます増幅させていく「エコーチェンバー現象」が起こります。これによって集団の中に埋没する「没個人性」が生まれ、自制心が低下した結果、ネット上の攻撃が現実の行動へと移り変わっていくケースがみられます。また、こうした過激な行動がメディアで取り上げられると、人々の中に「よくあることだ、当たり前だ」という「馴化(じゅんか)作用」が生じ、模倣行動が容易に発生してしまうリスクも指摘されています。
一方で、テレビや新聞などのマスメディアの状況についても言及されています。マスメディアは、公平・中立を求める規定や、平等性の確保を謳う公選法、さらには視聴者からのクレームなどが足かせとなり、報道の自主規制に走りがちです。その結果、内容としての面白みが薄れてしまい、現代社会における情報源としての比重が低下してしまいました。
また、情報を受容する側の心理として、SNSでは自分の意見と異なる主張をタイムラインから簡単に「回避」することができます。しかし、テレビではさまざまなニュースが並列で放送されるため、見たくない情報も目に入ってしまい、簡単には回避できません。そのため、テレビを見ているときの方が、自分の認識と現実のギャップにモヤモヤする「認知的不協和」が生じやすいという点にも触れられています。
参考
橋元良明(2026)「ネット社会における言論空間のゆがみ:SNS選挙と陰謀論」『響き合うことばと社会』pp.14-25.
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