#277 すっぴんの魅力
堀田秀吾先生の著書『戦略的タメ口』の中で、タメ口を「制限コード」として分類している箇所があり興味深く感じました。
これまで私にとって「精密コード」や「制限コード」という言葉は、能力格差を論じる文脈で使われることが多い印象でした。そのため「制限コード」で話すことは、教育を受けていない、あるいは知力が低いといったネガティブな意味で捉えられ、社会的に不利になるという文脈でこの用語に出会ってきました。
精密コードとは、豊富な語彙と複雑な文法を用い、論理的・客観的な説明を行うための言葉を指します。例えば日本語の敬語などは、一定の訓練を必要とする精密コードの代表格です。対して制限コードは、比較的少ない語彙や単純な文法を用い、主観的な表現や省略が多い言葉を指します。タメ口はこちらに分類され、文脈や共通の理解に頼る部分が多いため、親しい間柄でのコミュニケーションに向いています。母語話者であれば誰でも使えることから、本書では子供時代から使える「すっぴんの言葉」とも形容されています。
制限コードは、その「主観的」という性質ゆえに、うまく活用すれば自分の感情や考えを素直に伝えられる言葉でもあります。「すっぴん」が時折見られると嬉しいものであるように、堀田先生は、このタメ口を効果的に使うことがコミュニケーション能力を高める一つの手段であると述べています。
この「すっぴんを見せる」良さを引き出すには、普段の公の姿、つまり「化粧をしている姿」とのギャップが重要になります。堀田先生は、タメ口を使いこなす例として、歌舞伎などの伝統芸能における「型」を挙げています。基本となる決まり切った型をしっかりと身につけ、それができている上で少し変化を加える「崩し」が入るからこそ、それは「粋」に見えるのです。もし崩しばかりであれば、それはただのでたらめに見えてしまい、評価は下がってしまいます。
つまり、本当にタメ口を使いこなせる人とは、大半の場面ではきちんと敬語を使いこなしながら、ここぞというタイミングで効果的にタメ口を差し込める人のことを指している、ということになります。
参考
堀田秀吾(2025)『戦略的タメ口 結局、コミュ力の高い人がすべてを手に入れる』WAVE出版
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[精密/制限コード] [ため口] [敬語]