#263 落語の笑い
野村(1996)は、落語の特徴を以下のように分類しています。
まず、落語の会話は、演者の聴衆に対する直接の「カタリカケ」と登場人物どうしの会話の二重構造をもっています。これを自然会話と比較すると、登場人物の会話における発話には「同一人物の1回の発話がながい」「発話のかさなり(オーバーラップ)がない」「場面転換や時間の経過をしめす独白がおおい」といった特徴が見られます。また、発話におけるポーズ(間)には、「聴衆の反応をたしかめる」「場面転換を示す」「非言語行動をしめす」「登場人物のためらいをしめす」「演出上の強調を意図するもの」が多く含まれています。
さらに野村は、落語の笑いを談話構造から分析し、いわゆる会話規則(協調の原理)の違反に相当するものが聴衆の笑いを生じさせるということをふまえ、発話の連続における「不規則性」と発話内容の「異常」を発話機能の面から分析しています。
「不規則性」については、たとえば以下のやり取りが挙げられます。
A:うむ、あの太鼓はいくらで手放すのだ?(注目表示+情報要求)
B:いくらで手放すのだってことを、あなたはきくんですか?(情報要求)
聴衆:<笑い>
このように、<情報要求>に対して<情報提供>をするのが普通であるところを、<情報要求>に<情報要求>で返していること、そしてBは太鼓を売りに来た道具屋であり、Aの質問はいたって普通のことであるにもかかわらず、その内容が理解できないような不自然な返答をしていることが笑いをおこさせていると考えられます。
また「異常」については、<情報要求>に<情報提供>が行われたとしても、その答えが常識をはずれた内容であった場合(Aも客も驚くほどの法外な値段)などをさします。
A:手一杯って、手をいっぱいにひろげちゃって、いくらだ?
B:十万両です。
聴衆:<笑い>
こうした「何が笑いを生むのか」という構造を学びながら、私自身も笑いをとれる面白い人になりたいと思う今日この頃です。
参考
野村雅昭(1996)「発話機能からみた落語の談話構造」『早稲田大学大学院文学研究科紀要 第3分冊』第42号、pp.23-34。
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[笑い] [協調の原理]