#262 ほめられたら…
柏木(2017)は、日米のインタビュー番組を対象に、言語・非言語の両面から「ほめの返答」の比較分析を行っています。日米では「ほめる」習慣やその頻度が大きく異なると感じることが多いなかで、返答のバリエーションに着目したこの研究は、コミュニケーションの実態を知るうえで非常に興味深いものです。
分析の対象には、日本の『徹子の部屋』とアメリカの『The Ellen DeGeneres Show』が選ばれています。ほめの返答カテゴリーは、大きく「受け入れ」「回避」「打消し」の3つに分類されており、さらに詳細な下位分類が設けられています。たとえば「受け入れ」であれば、賛同するのか感謝するのか、それを言葉で行うのか動作で行うのかといった点です。「回避」については、話題の転換や、首を振りながら「黒柳さんの方がすごいです」と返すような「ほめ返し」、あるいは笑いや照れといった反応が含まれます。
研究の結果、日本語の返答では「私なんてそんなことはありません」といった「打消し」が多く見られましたが、英語では非常に少ないという対照的な特徴が示されました。「受け入れ」や「回避」は日米ともに確認されましたが、その表現方法には明確な違いがあります。日本語では、微笑みながらお辞儀をしたり、あえて視線を外したりといった非言語行動が多く組み合わされる傾向にあります。これは、謙虚さを示しながら相手の配慮にも応えるという、ポジティブ・フェイスとネガティブ・フェイスの両面を考慮した日本特有の複合的な反応と言えます。対して英語では、微笑みを浮かべながら「Thank you」と述べるような、言語行動を中心としたストレートな受容が目立つことが明らかになりました。
参考
柏木 厚子. (2017). インタビュー番組におけるほめの返答の日米比較―非言語データも含めた発話分析―. 学苑, (919), 1-14.