#260 明快性に関わるメタ
授業をしている際、ふと自分自身の話し方を振り返ると、「ここは面白いポイントなのですが」や「ここは大事なところなのですが」といった前置きをよく使っていることに気づきます。
この点について、杉戸(1998)の「メタ言語行動表現」という概念とその機能の説明について整理してみたいと思います。
まず「メタ言語行動表現」とは、「話し手が自らの行う言語行動のさまざまな側面について、記述的・評価的に言及する明示的な言語表現」のことを指します。これには大きく分けて二つの側面があります。
一つ目は「対人的な側面」です。これは、あらたまり、くだけ、うやまい、へりくだりといった、相手への配慮のあり方を明示する機能です。例えば、「わたくしなどがしゃしゃり出て僭越ですけれども」という表現は、話し手が自分自身の振る舞いに対して客観的な評価を加え、その配慮の内容をあえて言葉にしている例といえます。
二つ目は「内容・伝達的な側面」です。「ちょっとお願い、窓を開けて!」や「お尋ねします、この書類はどこに?」のように、これから行う言語行動の趣旨や目的をあらかじめ明示することで、情報を分かりやすく伝える機能を果たします。また、「シンポジウムの件について申し上げます」や「話題が変わりますが」といった、話題そのものを明言する場合もこれに含まれます。
杉戸氏は、「分かりやすく表現すること自体が対人的な配慮である」という解釈の可能性も認めつつ、それとは別に「伝達の明快性に関わるもの」としてこれらを区別すべきだと主張しています。
私自身が授業で使っている冒頭のフレーズも、内容を分かりやすく伝えるためであることはもちろんですが、それ以上に「ここを聞いてほしい」という、相手に注意を促すアテンションの心理から発せられているように感じています。
参考
杉戸 清樹(1998)「『メタ言語行動表現』の機能――対人性のメカニズム」『日本語学』17巻11号、pp.168-177、明治書院。
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