#256 いつでもオハヨー
学生たちが日常的にどのような挨拶を交わしているのか興味を持ち、簡単なアンケートをとってみました。厳密な集計は行っていませんが、回答を眺めてみると、その日初めて会う相手には時間帯を問わず「おはよう」と言ったり、親しい仲では「やっほー」「おつかれー」といった言葉が多く使われたりしている印象を受けます。
中でも「やっほー」という挨拶については、少し調べた限りでは先行研究が見当たりませんでしたが、今回の調査のきっかけとなったのは『國文學』の特集「あいさつことばとコミュニケーション」です。その中の都染(1999)による「キャンパスのあいさつことば」という論考を非常に興味深く読みました。
この論考では、当時から「オハヨー」の新しい用法が指摘されています。私の授業で見られた傾向と同様、時間を特定せず「その日初めて会った時の挨拶」として使われるようになっているというものです。当時の『新明解国語辞典 第5版』では、第二義に「芸能・放送の世界で、夜昼問わず、その日はじめて会ったときの挨拶」とあったそうです。もしも元々は業界用語(レジスター)だったものが一般に広まったのだとすれば、メディアの影響なども考えられるかもしれません。このあたりは、すでに多くの議論がなされている分野かもしれませんが、改めて考えさせられます。
また、同論考に引用されている学生のコメントにも、思わず共感してしまいました。「日が落ちてから使う時は、自分でもおかしいとは思いつつ、『こんばんは』と言うのは相手との間に距離を感じてしまう。だからつい『おはよう』で済ませてしまう」という心理です。丁寧な挨拶よりも、心理的な親密さを優先させた結果の選択なのかもしれません。
都染による当時の実態調査(学生・教員対象)によれば、この「新用法のおはよう」に違和感がないと答えた人は全体で63%にのぼりました。興味深いのは男女差です。男子学生は「おっす」「よー」「おー」といった別の選択肢があるため、新用法をあまり多用しない傾向にありました。一方で女子学生は、女子大か共学かで20%ほどの開きがあり、女子大の学生の方がやや違和感を強く抱いているという結果でした。しかし使用実態については、女子学生のほとんどが頻度の差こそあれ「使用する」と回答していたのが印象的です。
今回、学生たちの間で目立った「やっほー」などの表現については、また改めて調査したり考察したりしてみたいと思います。
参考
都染直也. (1999). 位相語その他:キャンパスのあいさつことば. 國文學:解釈と教材の研究, 44(6), 114–121.
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[あいさつ] [交感的コミュニケーション] [レジスター]