#239 理念の重要性
私自身の卒業論文と修士論文では、一貫して企業理念やミッションを題材とした分析を行ってきました。最近改めて、経営者にとって理念がどのように機能していると考えられているのか、といった視点から関連する文献を読み返しています。
もともとこのテーマに興味を持ったきっかけは、企業再生の現場でミッションの再構築が図られていたことでした。「ことば」を通して、人々が企業内での自らのアイデンティティを確認し、そこで求められる振る舞いを実践できるようになるのはなぜなのか。そのプロセスに強い関心を抱きました。
佐竹(2022)によれば、事業承継後のリーダーシップを支えるものとして、多くの論者が「理念→戦略→計画」という順序のプロセスを提唱してきました(Simons and Dávila, 2000など)。しかし現状では、その理念が単なる象徴的な「飾り物」として扱われてしまっているケースも少なくないことが指摘されています(槇谷, 2008)。
同論文では、親族内承継を行った中小企業を対象に比較分析を行っています。その結果、従来とは逆の「計画→戦略→理念」というプロセスを経て理念が創生されていく姿が浮き彫りになりました。
論文内では、以下のように述べられています。
「経営資源の乏しい中小企業が倒産の危機という状況下で事業承継を行う場合においては、理念の必要性は認識しつつも、後継者の動機づけの観点から、まずは当面の問題を解決するための計画を立て、そこから当該計画を合理的に達成するための戦略を検討した後に、当該戦略と整合性のある理念を早期に創成していこうとするプロセスが有効であるという可能性を示唆した。」
「理念が先か、計画が先か」という順序の違いはあっても、理念が重要であることに変わりはありません。ただ、その「ことば」にいかに実体性を持たせるかがいかに重要であるかを、改めて痛感させられた論文でした。
参考
佐竹恒彦(2022)「事業承継後における中小企業再生の理念創成プロセス:中小企業3社における後継者のリーダーシップ開発事例から」『日本政策金融公庫論集』56号、pp.45–69.
槇谷正人(2008)「経営理念研究の領域と方法論的諸問題」明治学院大学大学院経友会『経済・経営研究』41号、pp.39-63.
Simons, Robert and Antonio Dávila (2000) Performance Measurement and Control Systems for Implementing Strategy: Text and Cases, Prentice Hall.
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[アイデンティティ]