#232 おじさん構文
「おじさん構文」という言葉が定着して5年ほど経ちますが、いまだにLINEなどで、おじさんがおじさん構文(たとえ内容は真面目な業務連絡でも)を使っているのを見ると、なんだか嬉しくなることがあります。「あ、ちゃんと指標しているな」と、一つの文化を確認したような気持ちになるのです。
おじさん構文について論じた研究はまだ少ないのですが、工藤(2025)の定義をまとめると、その正体が見えてきます。工藤によると、おじさん構文は「一部の中年男性が、20代を中心とした若年層の女性に向けて、LINEなどのインスタントメッセンジャーを通じてメッセージを送る際に用いる文体」であり、2017年頃から注目され始めたといいます。絵文字やカタカナの濫用、相手へのハラスメントになりかねない内容、そして長文といった点が特徴です。
興味深いのは、工藤がおじさん構文の「なんちゃって(例:おじさんとデートしちゃう💖ナンチャッテ😊)」と、若者言葉の「ぴえん(例:つらい。ぴえん)」を比較している点です。一見、相容れない二つの言葉ですが、実はどちらも「フェイス(面子)の侵害を回避・緩和する」という共通の機能を持っているといいます。
例えば「おじさんとデートしちゃう」という誘いには、断られた時のリスクを避けるための「なんちゃって」が添えられます。また「つらい。ぴえん」も、深刻さを和らげるクッションとして機能しています。どの世代も、呼び方は違えど「他者の目を気にし、関係性に配慮する心」があることがわかります。
特定の「〇〇構文」は、文字通りの意味以上に、世代間の共通認識や連帯感を生むツールでもあります。次はどんな構文が出てくるのか楽しみですが、自分の文章がいつの間にか学生たちの間で「〇〇構文」として揶揄されたらまずいな……と、少し戦々恐々としています。
参考
工藤俊. (2025). おじさん構文「なんちゃって」と若者ことば「ぴえん」について. 『駒沢女子大学研究紀要』, 31, 67-80.
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[構文] [FTA] [垣根表現]