#225 歴史的にテクストをみる
以前このブログでも取り上げた「批判的談話研究」は、談話の中に潜む隠れたメッセージを暴き出す学際的な分野です。特にそのメッセージが扇動などのネガティブな影響を及ぼしうる場合、あらゆる手法を駆使して分析を行うのが特徴ですが、一方で「具体的にどのような手法をとればいいのか」が非常に漠然としており、私自身混乱してしまうことが多々ありました。
そこで今回は、その中でもよく耳にする「歴史的アプローチ(Discourse Historical Approach: DHA)」について、名嶋(2017)の知見を借りながら改めて整理しておきたいと思います。
このアプローチは、Wodak(2001)や Reisigl and Wodak(2009, 2016)らに代表される手法です。DHAが社会的な批判の対象とするのは、大きく分けて以下の3つの次元に集約されます。
テクスト・談話そのものに対する批判:新聞記事や政府高官の発言など、対象となる談話に一貫性があるかを確認する。
社会診断的批判:個人の発言やメディア報道といった多種多様な談話実践の中に、受け手を誘導するような「操作」が紛れ込んでいないかを検証する。
予知的批判:分析を通じて、より良いコミュニケーションのあり方を模索する。
「歴史的」という名の通り、単発の言葉を切り取るのではなく、一連のテクストの流れをその先まで含めて時間軸で捉え、分析・批判するところにこの手法の真髄があるのだと理解しました。
名嶋は、DHAにおける言語活動の捉え方について、非常に興味深い説明をしています。
例えば、ある政治家を取り上げた一つの記事やブログは「テクスト(text)」と呼ばれます。それを伝える形式(インタビューや記事など)は「ジャンル(genre)」であり、そこで扱われる話題が「ディスコース・トピック(discourse topic)」となります。重要なのは、これら様々なジャンルで発せられた無数のテクストが、時間的・空間的に相互に関連し合い、影響を及ぼし合うことで、一つあるいは複数の大きな「言説(discourse)」を作り上げるという考え方です。世論を形成する大きなうねりも、元をたどれば一個人の発話から始まっているかもしれない。そこに、社会における言語の計り知れない役割が見えてきます。
DHAのアプローチを学んでいると、公に発信することの責任や怖さを改めて実感します。一個人として一貫性のない発言は慎みたいと思う反面、「そもそも一貫性なんて本当に存在し得るのだろうか」と、自問自答してしまいます。
今後は、このアプローチを用いた具体的な分析事例にも触れ、さらに理解を深めていければと思います。
参考
名嶋義直編(2017)『メディアのことばを読み解く 7つのこころみ』ひつじ書房.
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[批判的談話分析(研究)]