#216 レトリックの可視化
レトリックについて調べていて、小松原哲太氏の論文「エトス・パトス・ロゴスが織りなす談話のレトリックの構造分析と可視化」(2023年)を読みました。
「はじめに」において、レトリック(修辞学)を「言葉をいかにして効果的に用いるかを探求する分野」と定義しています。その中心となるのが、アリストテレス以来提唱されてきた「説得の3つの様式」です。
エトス(ethos):話者が聞き手に提示しようとする自らの「人柄」
パトス(pathos):聴衆の感情や情動への「訴え」
ロゴス(logos):話者が話の中で展開していく「論証」
本論文の興味深い点は、これら3つの要素が実際の談話の中でどのように組み合わさっているか(構造化されているか)を捉えるための、具体的な記述枠組みや手続きがこれまで十分に議論されてこなかったと指摘している点です。そこで小松原氏は、ダイアグラム(図表)を用いることで、その複雑な構造を視覚的に捉える「可視化」を試みています。
論文の後半では、実際の「笑い話」を事例とした分析が行われています。そこでは、聞き手の愉快さを誘う「パトス」に焦点がある語りであっても、実は登場人物の「エトス」や、多層的な例証・説得推論による「ロゴス」の表現法が巧みに組み合わされていることが、視覚的な分析によって実証されています。
参考
小松原哲太(2023)「エトス・パトス・ロゴスが織りなす談話のレトリックの構造分析と可視化」『国際文化学研究:神戸大学大学院国際文化学研究科紀要』59, pp. 1-34.
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