#209 わざ言語
わざ言語についての発表を聴き、少し調べてみました。
中西(2013)は、生田久美子の研究を取り上げ、伝統芸能や伝統音楽の稽古において、師匠が論理的・説明的な言語とは異なる、特殊な言語を用いることを紹介しています。たとえば、「手を右上45度の角度に上げなさい」といった具体的で分析的な指示ではなく、「天から舞い降りる雪を受けるように」といった比喩的な表現が用いられるのだそうです。
こうしたことばは、喚起されたイメージを手がかりに、弟子が自分の知るべき「形」を身体全体で探っていくような学びのプロセスを促します。このような言語は「わざ言語」と呼ばれているとのことでした。
また、わざ言語は、しばしば師匠のもとで稽古を受けている弟子とのあいだでしか通用しないことも多いようです。学習者がそれまでうまくつかめなかったものが、「わざ言語」をかけられることで「ああ、そうか」と身体で腑に落ち、自然としかるべき動きができるようになる、という説明も印象的でした。
さらに、剣道指導における「わざ言語」については、加藤(2014)が、竹刀操作に関して「鞭のようなしなやかな打ち」「パパッと瞬間的に打ち切る」といった表現を、足さばきについては「スッと入ったとき」や「床をするようなかたちで」といった擬音語・比喩的表現の例を挙げています。
参考
中西紗織. (2013). 能の稽古における指導言語に関する研究:「わざ言語」 を手がかりとして. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 64(1), 111-119.
加藤弘貴. (2014). 「剣道指導における「わざ言語」の特異性」. 日本武道学会中四国支部会.
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