#205 みることときくこと
鷲田清一の『大事なものは見えにくい』を読んでいるのですが、興味深い指摘がありました。英語の audience、auditorium、audition などは、「聴く」を意味する接頭辞 audi-(ラテン語の audire=「聞く」)に由来しています。これに対して日本語では、「聴衆」「聴衆席」「試聴」といった語がある一方で、演劇の場面では「観客」「観客席」「演技のテスト」のように、「見る」に関わる語で表現される点が取り上げられています。
さらに、ギリシャ語の「イデア」や「エイドス」が「見る」という動詞から派生した語であり、「理論(セオリー)」も「観る(テオーレイン)」に由来するという話にも触れられています。こうした例を通して鷲田は、人間にとって根源的な意味をもつふるまいについて、「人間にとって大きな意味を持つ知覚が、見ることと聴くことというふうにデュアルにはたらきだすことを示している」と指摘し、「案外、洋の東西で共通の考え方をするものなのかもしれない。」と述べています。
参考
鷲田清一(2012). 『大事なものは見えにくい』. 角川ソフィア文庫.
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