#203 語りの中でのポジショニング
木場(2019)の論文を読みました。木場は、両性愛(バイセクシュアル)の性的少数者である女性、かつ日本では「外国人」とされうる民族的少数者の女性へのインタビューをもとに、語りの場において彼女たちのアイデンティティがどのように構築されていくのかを、ナラティブ分析によって明らかにしています。
理論的枠組みの中で紹介されているのが、Davies & Harré(1990)のポジショニング理論です。これは相互行為の「動的な側面」に焦点を当てる立場で、ポジションとは、話し手や聞き手が自分や相手を「ある人物」として取り上げるときに、あらかじめ固定されたものとして存在するのではなく、トークの中でその都度つくられていくものだと捉えます。たとえば、相手を位置づける相互行為的ポジショニングと、自分自身を位置づける再帰的ポジショニングといった区別があり、語りが進むにつれて、その場の関係性や意味づけが編み直されていく点が重要になります。
さらに木場は、Bamberg(1997)の整理も踏まえながら議論を進めています。Bambergはポジショニングを、①報告された出来事の中で登場人物が他者との関わりの中でどう位置づけられているか(物語内)、②語り手が聞き手に対して自分をどう位置づけているか(物語の外)、③語りを通して語り手が自分自身をどう位置づけているか、という三つのレベルに分け、「ポジショニング・クエスチョン」として提示しました。
参考
木場安莉沙. (2019). バイセクシュアル・アイデンティティのナラティブ分析―アイデンティティの共時的構築を中心に―. 社会言語科学, 22(1), 157-171.
Bamberg, Michael (1997). Positioning between structure and performance. Journal of Narrative and Life History, 7(1‒4), 335‒342.
Davies, Bronwyn, & Harré, Rom (1990). Positioning: the discursive construction of selves. Journal for the Theory of Social Behavior, 20, 43‒63.
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[ナラティブ] [アイデンティティ] [ポジショニング理論]