#197 テレビ型言語
『ダーリンの頭ン中』の中に、漢字の効率のよさについて触れられている箇所があります。
英語は、基本的に単語を一つひとつ覚えなければならないことが多いのに対し、漢字は意味をもつ文字の組み合わせでできているため、初めて見る語でもおおよその意味を推測できる、という指摘です。
たとえば、帯状分布=zonation、隠花植物=cryptogam、猫愛好=ailurophilia、接吻恐怖症=philemaphobia。英語でこれらを初めて目にしたら、意味を想像するのはなかなか難しいかもしれません。しかし漢字の場合、一字一字の意味を知っていれば、初見でも大体の内容がつかめます。文字そのものが意味のヒントを与えてくれるのです。
特に印象的なのは、医者に行って病名を告げられる場面の例です。もし “congenital biliary atresia” と言われても、何の病気か分からず、不安だけが募るかもしれません。それに対して「先天性胆道閉鎖症」と言われれば、完全には理解できなくても、「生まれつき」「胆道が」「閉じている」というように、意味を分解しながら把握することができます。その分、少し安心できる、というわけです。
この話を読んで、鈴木孝夫先生が日本語を「テレビ型言語」と呼んでいたことを思い出しました。日本語は、音声(聴覚)だけでなく、漢字という視覚情報も積極的に活用する言語であるという指摘です。それに対して、世界の多くの言語は「ラジオ型言語」、つまり主に音声に依拠する言語だと説明されていました(1990)。
参考
鈴木孝夫(1990). 日本語と外国語 . 岩波新書.
小栗左多里・トニー・ラズロ(2005). ダーリンの頭ン中 英語と語学. メディアファクトリー.
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