#194 心動かされるスピーチとは
前回取り上げたメタディスコースの続きとして、深澤ほか(2018)は、Lee(2011)および Lee・楊(2013)の研究成果を紹介しています。対象は、英語と日本語の学術論文、そして新聞の社説です。
その結果として示されているのは、言語によるメタディスコースの使い方の違いです。たとえば、英語の社説では、日本語の社説よりも Engagement 表現 が多く用いられていることが明らかになっています。一方で、日本語では英語よりも Questions が多く使われているという特徴があるそうです。さらに中国語も含めて比較すると、中国語では Boosters や Self mention、Appeals to shared knowledge が多いことが指摘されています。言語や文化によって、読み手との関係の築き方や主張の強め方が異なることが見えてきます。
深澤ほか(2018)は、こうした知見をパブリックスピーキング、具体的にはビブリオバトルに応用して分析しています。そこで注目されているのが、「コンテクスト共有」とその後の展開のパターンです。
説得的なスピーチでは、まずタイトルや著者名などから予想される内容を提示し、それをあえて覆すというパターンが多く見られます。また、本を読む以前から自分が持っていた経験や認識を提示して聴衆と共有し、そのうえで本によってその経験の意味づけが変わったり、認識が強化されたりしたことを語るというパターンも多いといいます。
おわりにでは、「決勝戦データでは、コンテクスト共有をするだけでなく、コンテクスト共有を起点とした展開を、メタディスコース表現を効果的に用いることで成功させている」と述べられています。
参考
深澤のぞみ, 山路奈保子, & 須藤秀紹. (2018). 日本語パブリックスピーキングにおける説得の特徴——書評ゲーム 「ビブリオバトル」 の観察から——. 日本コミュニケーション研究, 47(1), 25-45.
Lee, N. I., & 楊, 彩虹. (2013). 日本語・英語・中国語の新聞の社説に現れるStance表現とEngagement表現:中国語の特徴を中心に. Studies in Language Science, 3, 75–91.
Lee, N. I. (2011). Academic and journalistic writing in English and Japanese: A contrastive study on stance and engagement expressions. Journal of Modern Languages, 21(1), 59–71.