#192 メタディスコース
深澤ほか(2018)は、説得的な内容にするためのストラテジーという観点から、Hylandのメタディスコース(metadiscourse)研究を取り上げています。文章を書くとき、単に内容そのものを提示するだけでなく、どのように読者を導き、巻き込み、関係を築くかが重要であるという視点です。
Hyland(2005)によれば、メタディスコースは大きく Interactive metadiscourse と Interactional metadiscourse の二つに分類されます。
まず、Interactive metadiscourse は、「読み手のために情報を整理する方策」です。文章の流れを明確にするための仕掛けといえるでしょう。たとえば、文と文のつながりを示す接続詞などの Transition、「結論を述べると…」のようにまとまりを示す Frame markers、「図1」のように図表などを指し示す Endophoric markers、そして「たとえば」など内容の意味を補足・具体化する Code glosses などが含まれます。これらは、読者が迷わず議論を追えるようにするためのサインのような役割を果たしています。
一方、Interactional metadiscourse は、「読み手を書き手の議論に巻き込む方策」です。ここでは、書き手がどのように自分の立場を示し、読者と関係を築くかが問題となります。これはさらに Stance と Engagement に分けられます。
Stance は、書き手の判断や態度を示す方法です。たとえば、「~かもしれない」といった緩和表現の Hedges、「明らかに」「絶対に」といった確実性を強める Boosters、「驚くべきことに」「残念ながら」などの Attitude markers、そして一人称代名詞を用いる Self mention などが挙げられます。これらは、書き手がどのような距離感や確信度で語っているのかを示します。
Engagement は、読者との関係を積極的に構築するための方策です。Reader pronouns(you や we)を使って読者を直接指し示したり、命令形などの Directives によって行動を促したり、Questions によって問いを共有したりします。また、「もちろん」のように共有知識を前提とする Appeals to shared knowledge、議論の流れを少し中断して読者に語りかける Personal asides も含まれます。
参考
深澤のぞみ, 山路奈保子, & 須藤秀紹. (2018). 日本語パブリックスピーキングにおける説得の特徴——書評ゲーム 「ビブリオバトル」 の観察から——. 日本コミュニケーション研究, 47(1), 25-45.
Hyland (2005) . Metadicourse , London. U.K.
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[メタディスコース] [説得] [垣根表現(Hedge)]