#191 パブリックスピーキング
パブリックスピーキングについて、深澤(2020)の議論を読みました。深澤は、日本語パブリックスピーキングを「新しい情報や自分の考えなどを日本語で他人に伝えること」と定義し、さらにメッセージを通して相手を納得させることを「説得」と呼んでいます。そして、その説得のプロセスを、言語行動だけでなく非言語行動も含めた量的・質的調査によって明らかにしようと試みています。
分析の対象として用いられているのは、「全国ビブリオバトル」の決勝戦の実践データです。ビブリオバトルは、複数の参加者が5分間で自分のおすすめの本を紹介し、聴衆が投票によって最も読みたい本を選ぶという書評ゲームです。限られた時間の中で、いかに聴衆の心を動かすかが問われる場面であり、説得のあり方を分析するうえで非常に興味深いデータだと感じました。
分析の結果として示されていたのは、聴衆への働きかけの重要性です。具体的には、聴衆に質問を投げかけたり、聴衆への提案を繰り返したりするなど、さまざまな形で聴衆を巻き込む工夫が見られたとのことです。また、質疑応答の場面においても、単に質問に正確に答えることだけが重要なのではなく、聴衆の質問の意図を理解し、場合によっては問い返すなど、対話を広げる姿勢が説得に寄与することが明らかにされています。
深澤は、「一方的なスピーチでは、どんなに内容がよいものであっても効果的であるとは限らず、聴衆と何らかの形で、直接コミュニケーションが実現でき、それが互いの理解の共有につながっていることが、説得に大きい影響を持つのではないか」と述べています。
自分自身のプレゼンテーションや授業スタイルを振り返ってみても、内容の構成や資料づくりに意識が向きがちですが、聴き手との相互作用という視点は、まだまだ工夫の余地があると感じます。今回の知見を踏まえ、聴衆とのコミュニケーションをより意識した実践を取り入れていきたいと思います。
参考
深澤のぞみ(2020).『グローバル化時代のパブリックスピーキングにおける「説得」の諸相』科学研究費助成事業 研究成果報告書.
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[パブリック] [オーディエンス] [相互行為][説得]