#186 リフレーミングの実践
リフレーミングの実践が、実際にどのように臨床場面で用いられるのかについて、家族療法家の事例が紹介されています。
一つ目は、6歳の女の子がいまだにおねしょをしてしまうというケースです。寝る前に水を控えるとおもらしの量が減るという報告を受け、セラピストは、おねしょの原因は娘本人に責任があるのではなく、本人とは切り離された「身体」にあるのだと説明します。たとえば、「今日から少し身体を調べましょう。寝る前にお水を飲まないことにしよう。そして朝起きてどうなるか調べよう…」と語りかけることで、問題の所在を「本人」から「身体」へと移し替えます。こうした枠組みの転換によって、状況が解消したという場面です。
もう一つは、長年の付き合いのある友人から、職場での人間関係の悩みを相談された例です。相談してきた友人に対して、「君は〇〇な状況で△△する傾向がある。だからそういう場合は✕✕すべきだ」と助言したところ、相手は立腹してしまいます。その背後には、「アドバイスする―アドバイスされる」という相談場面に内在する権力の非対称性があります。
ここで、友人が抱えている問題を「あなた」だけの問題としてではなく、「我々の」問題として捉え直すかたちでリフレーミングを行います。つまり、「我々は〇〇な状況で△△する傾向がある。だからそういう場合は✕✕しよう」と言い換えるのです。こうすることで、関係性そのものを変えることができるとされています。
言い換えれば、2人称の命令文「Do it」を、一人称複数形の提案文「Let’s do it」へと変化させることで実現されるリフレーミングです。この手法は、「包括のwe(inclusive “we”)」が、話し手と聞き手の両者を含む協力関係を提示するポライトネス・ストラテジーとしても知られている点とも重なっています。
参考
岡本雅史(2013)「コミュニケーションの仕掛け:認知と行動の変容を促す多重のストラテジー」『人工知能』28(4), 607–614.
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