#180 何を評価するか
成績をつける時期になったので、渡邊(2004)の「日米通知表比較」を思い出しました。ここでは詳しく踏み込まず、ポイントだけ端的に紹介したいと思います。
日本では、平成元年(1989年)の改訂を受け、平成4年(1992年)から施行された評価制度において、「学力」をいくつかの構成要素に分け、その中でも「関心・意欲・態度」を特に重視するようになりました。テストの点数だけでは測りにくい、児童の「やる気」や「取り組みの姿勢」といった主観的な要素を、あえて評価の対象にしようとする制度です。学期ごとに教師が総括的なコメントを書く「所見」欄が大きな位置を占めている点も、以前から変わっていません。さらに、「ポートフォリオ評価」と呼ばれる方法も注目されるようになり、一年間を通して児童の作品や教師のメモを蓄積し、その発達の過程を振り返るという視点も重視されるようになっています。実際、大学教員として私自身も毎年これを書いていますが、振り返るたびに「去年とは違う自分」を見るようで、個人的には結構楽しい作業でもあります。
ここから見えてくるのは、日本ではテストなどの「結果」よりも、学習に至る「過程」を評価しようとする傾向が強い、という点です。
一方、アメリカの通知表は、試験の成績(点数)を中心とした構成になっており、教師も主要科目の評価や州の標準試験の結果を、学年進級や進学において重要な指標として捉えていることが示されています。
渡邊(2004)はこの違いを次のようにまとめています。
「最も大きな違いは、日本では『内面的な発達』とそれを窺わせる『態度』を重要な評価対象とするのに対して、アメリカでは『行動として現れる』『観察可能なことがら』を評価対象にしていることである。日本では『知』『情』『意』すべての領域を評価の対象とするのに対して、アメリカでは『知(認知)』の領域を重点的に対象とする評価が基本である。」
通知表という一見身近なものから、「何を評価するのか」という価値観の違いが浮かび上がってくるのは、とても面白いところだなと感じます。
これを読んで少し話はそれますが、ドラえもんの英語版がローカライズされ、成績の点数表記が変更された、という話を思い出しました(以下の図)。以前、英語の記事で読んだ記憶があるのですが、肝心の記事が見当たらず…。
参考
渡辺雅子(2004)『納得の構造――日米初等教育に見る思考表現のスタイル』東洋館出版社.
https://www.cinematoday.jp/news/N0062873#google_vignette
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