#171 独立と関係のはざま
Markus and Kitayama(1991)は、自己や他者、そしてその相互関係をどのように捉えるかについて、文化による違いがあることを指摘しています。ややステレオタイプ的に整理されている側面もあるとは思うのですが、「こうした捉え方のバリエーションがある」と知るという点では有効だと感じているので、ここに書き留めておきます。
彼らによると、自己の捉え方には大きく二つのタイプがあります。一つが Independent Construal、もう一つが Interdependent Construal です。
多くの西洋文化は前者の Independent Construal に属するとされ、個人は他者から独立した存在であり、それぞれが固有の信念や価値観をもっていると考えられます。この文化における規範は、他者から独立していることや、自分だけの属性(attributes)を見つけ、それを表現することが歓迎される点にあります。行動の基準も、他者の考えや感情よりは、自分の内側にある思いや感情、行為のレパートリーが参照されるといいます。これを示しているのが、図のAです。
一方で、Interdependent Construal は、主に非西洋文化に多いとされ、人と人とのつながりを重視します。文化的な規範として重要なのは、個々人のあいだの相互関係を維持することです。自分自身を社会的関係の一部として捉え、他者が何を考え、何を感じ、どのように行動しているのかを意識しながら、それに合わせて自分のふるまいを決めていく、という特徴があります。
この考え方に近いものとしては、厳密な対応関係ではないものの、sociocentric、holistic、collective、allocentric、ensembled、constitutive、contextualist、connected、relational といった語が挙げられています。図ではBにあたるのですが、自己を示す円が点線で描かれているのが、どこか不安定な印象を与えるのも印象的です。
これは、自己のあり方がその時々のコンテクストによって変化しうるからだと説明されています。実際、論文中では次のように述べられています。
“An interdependent self cannot be properly characterized as a bounded whole, for it changes structure with the nature of the particular social context.”
さらに、Interdependent な自己において焦点化され、対象化されるのは「内なる自己」ではなく、人と人との関係そのものであるとも指摘されています。
“What is focal and objectified in an interdependent self, then, is not the inner self, but the relationships of the person to other actors (Hamaguchi, 1985).”
現時点では、どちらか一方ではなく、両方の視点を大切にし、どちらも持っていることが重要なのではないかと感じています。Interdependent のように、状況に応じて柔軟に自己を変化させる姿勢は、自己変革という点ではとても有効です。一方で、「本当の自分とは何なのだろうか」と不安になることもあるように思います。かといって、Independent な自己だけを強く前面に出していても、他者に対して寛容でい続けるのは難しい気もします。だからこそ、他者との関わりの中で Interdependent に場に適応しながらも、その経験を通して見えてきた新たな側面を、最終的には自分自身の属性として、独立したかたちで統合していく。そのようなかたちで、変わらない Independent な自己も少しずつ更新していけたらいいなと思っています。
参考
Markus, H. R., & Kitayama, S. (2014). Culture and the self: Implications for cognition, emotion, and motivation. In College student development and academic life (pp. 264-293). Routledge.
Hamaguchi, E. (1985). A contextual model of the Japanese: Toward a methodological innovation in Japan studies. Journal of Japanese Studies, 77,289-321.
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[アイデンティティ]
p.226