#165 ことばの力
「発語媒介行為」について考えています。これは発話行為(speech act)の3種類のうちのひとつですが、いわゆる「ことだま」や、私がこれまで研究対象としてきた企業のミッション・ステートメントなど、「言葉が人々を動かす力」を説明する際に、とても有効なのではないかと感じたからです。
発話行為の3種類について、堀田(2022 #4714)は次のように説明しています。まず、話し手による発話そのもの、狭い意味での発話行為である locutionary act。次に、話し手の意図、あるいは話し手が発話によって行っていることにあたる illocutionary act(発語内行為)。そして最後が、話し手が発話を通じて聞き手に及ぼす効果である perlocutionary act(発語媒介行為)です。
小松原(2013)は、洒落や駄洒落を対象に、言葉遊びから生じる発話の力を取り上げていますが、その中で、発話行為に伴ってはたらく語用論的な効果について、Austin(1962)の区別を紹介しています。それが、発語内的な効果と発語媒介的な効果の区別です。
前者については、「ある発話行為が発語内的(illocutionary)であるとは、ある言語表現を述べること自体において(in saying something)行為が遂行され、語用論的な力が生じることを言う」と説明されています。たとえば I order you to leave. における命令の力がこれにあたります。
一方、後者については、「ある発話行為が発語媒介的(perlocutionary)であるとは、ある言語表現を述べることによって(by saying something)、その結果として解釈者が発話者の意図を認めることをいう」とされています。たとえば There is a snake behind you. という発話によって生じる警告の力が、その例として挙げられています。
参考
小松原哲太(2013).言葉遊びから生じる発話のカ: 洒落が駄洒落となる場合の文法的及び語用論的条件.日本語用論学会大会発表論文集, 8, 81–88.
Austin, J. L.(1975).How to do things with words. Harvard University Press.
堀田隆一(2022) #4714 発話行為とは何か?https://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/2022-03-24-1.html