#163 旧マスメディアによる社会化の弱まり
伊藤(2019)では、「メディア」という概念が二つの観点から説明されています。
一つ目は、コミュニケーションを媒介するための手段であるという点です。ただし、この定義だけでは、教員と生徒がやりとりを行う学校のような場も「メディア」に含まれてしまいます。そこで伊藤は、二つ目の重要な側面として、メディアは非対面的なコミュニケーションの手段であることを指摘しています。
この点を踏まえたうえで、「メディアは時間と空間を再編成するという重要な役割を社会において果たす」と述べられています。さらに、旧来のマスメディア組織によるマス・コミュニケーションについては、対面的な相互行為の範囲を超えて、特定の価値観や慣習、社会的規範に関する知識を広く共有するという、社会的に重要な機能を担ってきたとされています。言い換えれば、旧マスメディアは個人を社会化する装置として機能してきた、という見方です。
一方で、現在は多くの人がパソコンやスマートフォンという「マスメディア」を個人で所有し、YouTubeやXといったSNSを通じて、誰もが不特定多数の人々に向けて、時間や空間を超えて情報を発信できる時代になっています。伊藤(2019)では、このような状況の中で、社会の成員に共通の価値観や社会規範についての知識を共有させるという、従来のマスメディアが担ってきた機能が、次第に低下しつつあることにも触れられています。
参考
伊藤 高史(2019)「インターネット・SNS時代の『マス・コミュニケーションの全面化』に関する考察――メディア社会学と社会システム論の観点から――」『評論・社会科学』第131号,pp. 1–21.
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