#159 ゴシップの役割
前回に引き続き、Coupland(2019)では「ゴシップ」についても取り上げられています。ゴシップは、スモールトークのサブジャンルとして捉えることも可能だろう、という立場から、その定義や具体例、そして機能が紹介されています。
論文では、ゴシップを次のように定義しています。
Gossip is newsworthy, disclosive and critical talk about others (usually absent third parties).
つまり、基本的にはその場にいない第三者についての新しい情報や暴露的な内容、あるいは批判的なトークを指します。ゴシップには一定のリスクが伴いますが、その一方で、ゴシップの対象となる人(gossippees)をその場から排除し、ゴシップを共有する側同士(co-gossipers)のあいだに結束や連帯感(allegiances)を生み出す働きがあると指摘されています。
内容としてはストーリーテリングの形を取ることもありますが、単なる出来事の報告ではなく、そこには評価や判断が含まれる点が特徴です。例として挙げられているのは、女の子二人が男友達の新しい彼女について話し合う場面で、理想の彼女像を共有しながら、その人物を批判するというゴシップです。このやりとりを通して、ゴシップが集団内の価値観や規範を共有する役割を果たしていることが示されています。
論文では、こうした機能について次のように述べられています。
This is gossip functioning as a social sanctioning mechanism and a form of ‘moral policing’ whereby speakers can construct and assert collective values and establish normative boundaries of acceptable behaviors.
つまりゴシップは、集団の中で何が許され、何が許されないのかという境界を確認し、共同の価値観を構築・主張するための、社会的な制裁装置、あるいは道徳的な取り締まりとして機能しているというわけです。
最終的に、ゴシップを含むスモールトークについて、この論文では、単なる中身のないおしゃべりではなく、予測可能な形式を通して人と人とをつなぎ、社会的な空間を満たす、非常に強い交感的機能を担っていると述べられています。
This is a very particular and strong ‘communing’ function of talk, far removed from Malinowski’s ‘purposeless’ and ‘empty’ language, filling social spaces with predictable formulae.
参考
Coupland, J. (2009). Social functions of small talk and gossip. In N. Coupland & A. Jaworski (Eds.), The New Sociolinguistics Reader (pp. 646-61). London: Palgrave Macmillan. Palgrave Macmillan.
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[スモールトーク] [ゴシップ] [アイデンティティ]