#149 アコモデーション理論
指標性に続いて、社会言語学のさまざまな基本概念をあらためて読み直す日々が続いています。最近は、アコモデーション理論について、いくつかの入門書や概説書を行き来しながら確認していました。多くの本で、この理論は社会言語学の基本的な枠組みの一つとして紹介されています。
佐野(2015)は、話し方の違いを「誰が話すのか」ではなく、「誰と話すのか」によって捉える理論として、Giles ら(1991)のコミュニケーション・アコモデーション理論を説明しています。
東(2009)では、その調整の対象となる具体的な言語項目として、語彙や発音だけでなく、話す内容、ポーズ、話速、発話の長さ、文法、さらには微笑みや視線といった非言語行動までが挙げられています。
また、橋内(1999)は、まず話し手の側に、相手に好意や関心を抱き、同じ仲間に入りたいと感じる心理的な収束(psychological convergence)が生じ、その結果として、相手に近づく言語的収束(linguistic convergence)が起こると説明しています。逆に、相手の話し方から距離を取ろうとする場合は、心理的拡散・言語的拡散(divergence)が生じます。
さらに東(2009)では、収束には上向き(upward convergence)と下向き(downward convergence)があるとされています。前者は社会的に地位が高いとされる話し方に合わせること、後者は社会的に地位が低いとみなされる話し方に合わせることを指します。下向きの例としては、社会的地位の差だけでなく、日本語が十分にできない外国人に対して不自然に簡略化した日本語で話す、いわゆるフォーリナートークなども挙げられています。
参考
東照二. (2009). 社会言語学入門<改訂版>: 生きた言葉のおもしろさに迫る. 研究社.
佐野直子(2015)『社会言語学のまなざし』(シリーズ「知のまなざし」)三元社
橋内 武(1999)『ディスコース――談話の織りなす世界』くろしお出版.
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[アコモデーション理論] [フォーリナートーク]