#145 さまざまなユーモア
Janet Holmes の“Humour, Power and Gender in the Workplace” を読みました。
データはニュージーランドの職場で、政府機関や民間企業、小規模ビジネス、工場、病院の病棟など、かなり幅広い現場が対象になっています。この論文でのユーモアの定義は次のようなものですが、やはり判断は簡単ではないとも述べられています。
For our purposes, humorous utterances have been defined as those identified by the analyst, on the basis of paralinguistic, prosodic, and discoursal clues, as intended to be amusing by the speaker(s), and perceived to be amusing by at least some participants.
つまり、話し手が面白がらせようとしていて、かつ少なくとも一部の参与者に面白いものとして受け取られている発話を、パラ言語的・韻律的・談話的手がかりから分析者が判断する、という立場です。
分析では、100分間にどれくらいユーモアが出現するかといった量的比較も行われていて、その点も興味深いです。
質的分析では、ユーモアを大きく二つに分けています。一つ目は Supportive and Cooperative Humor。繰り返し、言い換え、模倣、共同構築、重複が多いといった言語的特徴をもつユーモアで、“collaboratively constructed humour sequences is one obvious means by which people ‘do collegiality’ at work”と述べられています。説明の中では、Jennifer Coates(1996)の “all-together-now talk”(女友達同士の会話で見られる、みんなで一緒に作り上げていく話し方)との関連も指摘されていて、このトークの名づけ方がとても面白く、印象に残りました。
二つ目は Challenging and Competitive Humor。こちらは重複や共同構築があまり見られず、話しを広げていくというよりも、“a series of loosely semantically linked one-off quips or witty one-liners”のように、軽くつながる一発ネタ的なやり取りとして現れるユーモアです。
さらに論文では、こうしたユーモアを通してジェンダー・ステレオタイプがどのように可視化されるかについても考察されています。
余談ですが、今回の内容とは直接関係なく、論文に載っている会話の抜粋を読み解くのが、私はどうも苦手です。そこにユーモアまで重なると、なおさら解読が難しくなり、「うーん」と唸りながら読み進めることになりました(汗)。
それでも、職場という場でユーモアがどのように人間関係や権力、ジェンダーと結びついているのかを考える上で、とても示唆の多い論文でした。
参考
Coates, J. (1996). Women Talk: Conversation Between Women Friends. Blackwell.
Holmes, J. (2009). Humour, power and gender in the workplace. In N. Coupland & A. Jaworski (Eds.), The New Sociolinguistics Reader (pp. 631–645). London: Palgrave Macmillan.
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[ユーモア] [ジェンダー] [職場談話]