#44 英語っぽい日本語
昨日話題にした翻訳機能の限界についてですが、それは入力する側の限界ともいえるかもしれません。実際、機械の限界を嘆くよりも、自分の英語を「機械翻訳が訳しやすい英語」に適応させようという考え方があります。
井上(2020)は、多くの企業が製品を多言語展開する際、取扱説明書やマニュアルの翻訳コストを下げるために、まず「機械翻訳しやすい英語を書く」ことを行っていると指摘しています。こうした、どんな言語にも訳しやすい英語を、専門的には「Global Text(グローバルテクスト)」と呼ぶことを紹介しています(「Global Text」という用語の初出を探してみたのですが、見当たりませんでした。今度直接井上先生に伺ってみたいと思います)。
この考え方は「Global English」という概念ともつながっています。穐元(2017)はKohl(2008)を参考に、その基準を紹介しており、要点は「難解な単語や文法構造を避け、語や文法による曖昧性を取り除くこと」。つまり「理解と翻訳の両方の面でわかりやすい英語」を目指すということです。
また井上(2020)は、「英語っぽい日本語」で翻訳をかける必要性についても触れています。たとえば「すみません。スカイツリーへどうやって行けばいいでしょうか(機械翻訳:Excuse me. How do I get to Skytree?)」よりも、「すみません。ヤンキースタジアムまでどうやって行けるかを教えてくれませんか(機械翻訳:Excuse me. Can you tell me how to get to Yankee Stadium?)」の方が、機械翻訳を通した結果も自然な英語(人間が翻訳する英語)に近づくという例です。
昨日の「社会指標的機能」の話とも重なりますが、機械翻訳を有効に使うための「英語っぽい日本語」を実現するためにも、相手の言語・文化的な知識を知っていることが重要だと分かります。
参考
穐元美咲. (2017). 人工共通語希求の内発性と外発性についての一考察. 藝文研究 (112), 246–236.
井上逸兵. (2020). 「テクノロジー時代に見えてくる異文化コミュニケーション」. Bilingualism Studies and English Learning.
Kohl, J. R. (2008). The global English style guide: Writing clear, translatable documentation for a global market. Cary, NC: SAS Institute.
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[翻訳] [Global Text] [社会指標的機能]