#22 「て」で応答する
8月31日の日本認知言語学会で印象に残った、横森大輔先生の「聞き手行動の資源としての接尾辞『て』」についてご紹介したいと思います。
前提となるのは、「言語使用は聞き手の参加や関与があって初めて成り立つ共同活動である(Clark 1996)」という考え方です。そのうえで、横森先生は聞き手が応答に用いる小さな形態素に注目し、とりわけ「て」の使用頻度が高かったことから分析を行っていました。
最初は「『て』なんて言うのかな?」と思っていたのですが、発表を聞き進めるうちに「もしかして自分も使っていたかも」と思うまでに・・・。
「て」が現れるのは、先行話者が[述部+て]を使って出来事の連続(経緯や手順など)を説明した場面で、そのタイミングに合わせるように聞き手が「て」と返すケースです。そこには大きく3つの機能があるとされていました。
理解を示す
相手の理解を承認する
第三者に向けて発話を共同構築する
このうち2の「相手の理解を承認する」例として、北海道で新事業を始める樫田に対して、森脇が事業の進め方について自分の理解を踏まえて確認している場面で、樫田が「て」と応答するやりとりが紹介されました。
横森先生によれば、この「て」の応答は単なる「うん、うん」といった情報の受け止めとは異なり、相手の情報に積極的に参加する姿勢を示しつつ、出来事の内容自体には深入りせず、その流れ(継起関係)にコミットする点が特徴的とのことでした。つまり「参加の意欲を見せつつも干渉を最小化する」応答だと説明されていました。
実際に『日本語日常会話コーパス』の例を見てみると、話し手と一体感を持って「て」と言っていて、本当に会話を一緒に進めている印象を受けました。どういった関係性で見られるのかなど、まだまだ検討が必要ですが、「積極性を見せながらも邪魔をしない」聞き手術の一つとして強く記憶に残りました。
参考
横森大輔(2025)「聞き手行動の資源としての接尾辞『て』」『日本認知言語学会第26回全国大会発表論文集』pp.81–84.
Clark, H. H. (1996). Using Language. Cambridge: Cambridge University Press.
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[聞き手行動] [相槌]