#21 ことばもサステナブル
昨日取り上げた「アナロジー」というのは、未知のものを既知のものとして捉える心の働きのことを指します。これはメタファー(隠喩)という言語現象の基盤にもなっています。野村(2014)は、メタファーを「類似性に基づくが、like や ~のような といった指標を含まない比喩」であり、「2つの異なるカテゴリー(領域)が関与している」と説明しています。
例えばキクラゲの名前を見てみると、中国語では「木耳」と書きますが、これは見た目が耳に似ていることからきています。一方、日本語の「キクラゲ」は、食感がクラゲに似ていることに由来しています。いずれも「耳」や「クラゲ」といった別カテゴリーに喩える点で、典型的なメタファーの例です。
こうした「別カテゴリーを使って未知や抽象的なものを説明する」場面は、実は日常にあふれています。たとえばピアノのレッスンでも、先生は音の調子を伝えるときにメタファーをよく使います。以前、「そのフレーズは不揃いの真珠にならないように!」と言われたことがありました。思わず不揃いの真珠のネックレスを思い浮かべて、なるほどと納得したのを覚えています。
キクラゲや不揃いの真珠のように、一語で鮮やかなイメージが浮かぶものもあれば、もっと広がりをもって散らばっている例もあります。例えば「LOVE IS WAR(恋愛は戦)」という概念メタファー。これは私たちが「恋愛は戦」という心の見立てを共有しているからこそ成立するものです。そこから、
He is known for his many rapid conquests.
She fought for him, but his mistress won out.
He fled from her advances.
He won her hand in marriage.
といった表現が生まれてきます。日本語でも『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦』という作品がありますが、「告る・告られる」が勝ち負けとして描かれていて、副題にも「頭脳戦」とあるあたり、恋愛を戦いに喩える心の見立てが日英語に共通していることが分かります。
こう考えると、言語使用は案外エコだなと思います。未知のものを、すでに知っている感覚で捉えることができれば、むやみに新しい語彙を増やす必要はないからです。
音楽についても少し考えてみました。たとえば MUSIC IS CLOTH や MUSIC IS TEXTURE といった概念メタファーは可能かもしれません。「聴衆は素晴らしい音色に包み込まれた」や「なめらかに弾く」といった表現は、布や手触りに喩えることで感覚的に伝わっているように思います。このあたりはまだ調べ切れていませんが、すでにどこかで提案されているのかもしれません。
追伸:本日も引き続き日本認知言語学会に参加しています。この2日間のブログは早稲田大学近くのタリーズにて書きました。お世話になりました。
参考
野村益寛. (2014). 『ファンダメンタル認知言語学』 ひつじ書房.
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[アナロジー] [メタファー] [概念メタファー]