#12 明かすことと隠すこと(2)
昨日の話題に引き続き、今日は自己開示(self-disclosure)について、分かっていることをまとめてみたいと思います。
初対面会話は、お互い未知な状態から始まるため、自分について話すことが必ず求められる場面です。どこまでの情報を公開し、どのように展開していくのか。そうした自己開示のエッセンスを見せてくれるデータだと思います。
大谷(2018)は、日本語とオーストラリア英語の初対面会話を対象に、串田(1997)の「共-選択」という分類をもとに対照分析を行っています。
・共-選択:ポーズや沈黙などによる明確な区切りのない話題展開(=「切れ目ないトピック推移」)において、先の発話で言及された語句と同じ分類に属するものを見つけ出して言及すること。
串田(1997)はさらに次のように分けています:
・局域的共-選択:直前の発話の語句や、それに属する内容を取り上げて関連付ける
・広域的共-選択:語句の類似ではなく、文脈や語り方の類似性を用いる
・接線的共-選択:進行中の話題の中で顕著化していない要素を拾い、新しい流れを生む
結果として、英語会話は日本語会話と比べると、局域的だけでなく広域的・接線的共-選択も多く用いて「切れ目ないトピック推移」を実現させ、話題が長く継続していることが分かりました。また、共-選択においても、日本語会話は自己の情報や経験談と絡める傾向が強いのに対し、英語会話はそれに加えて自己の考えや意見とも絡めて展開している点が特徴的でした。さらに、日本語会話では相手からの共-選択がなく、自分の話題に自ら共-選択する事例も見られたそうです(これは英語にはない特徴)。
大谷は、こうした違いが「英語は日本語以上に自己開示が大きい」という岩田(2015)の結果にもつながっていると述べています。つまり、英語話者は相手の話題に対して局域的・広域的な共-選択を積極的に行うために、結果的に自己開示が大きくなる、というわけです。
年度はじめや学期はじめに学生同士の初対面会話を見ていると、やはり会話が続かず沈黙してしまう様子をよく目にします。実際にスモールトークを実施してアンケートを取ると、「時間を短くしてほしい、話が続かず気まずい」という声もありました。
だからこそ、この初対面会話の研究や「共-選択」の概念を知ることは、私たちにとってとても大事な視点を与えてくれると思います。相手の発話の中から関連する取っ掛かりを探したり、似たような現象と結び付けて話を展開することができると、会話はもっと続くし、相手との関係性も新しいものになるかもしれません。
そう考えると、日々の経験や学びの積み重ねは「共-選択」を可能にする引き出しになり、会話の場面で自然に生かされていくのだと感じて、なんだかワクワクしてきます。
参考
大谷麻美(2018).日・英語の初対面会話における話題の連鎖と展開―共-選択の観点からの分析.『社会言語科学』第21巻1号,pp.96‒112.
岩田祐子(2015).日・英語初対面会話における自己開示の機能.津田早苗・村田泰美・大谷麻美・岩田祐子・重光由加・大塚容子(著)『日・英語談話スタイルの対照研究:英語コミュニケーション教育への応用』,pp.37‒91.ひつじ書房.
串田秀也(1997).会話のトピックはいかに作られていくか.谷泰(編)『コミュニケーションの自然誌』,pp.173‒212.新曜社.
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[自己開示] [初対面会話] [話題展開]