#4 お盆のコミュニケーション
お盆で、父の実家のある長野県飯田市に来ています。
今年は祖父が亡くなって初めてのお盆ということで、親戚一同が集まりました。せっかくなので、ここで感じたコミュニケーションの面白い点を少しご紹介します。
まず印象的なのは方言です。たとえば「そうでしょ?」や「そうだよ」にあたる表現が「そうだら?」「そうだに」となります。今日、祖母が「行きましょう」という意味で「行かまい」と言ったのも耳に残っています。特に今日は近くに住む親戚も訪ねてくれたため、方言の使用が一層際立っていたように思います。同時に、話者ではない私には、ほんの少し疎外感を覚える時間でもありました。
方言が強く感じられたのは、やはり全員が親戚で、しかも同じ土地の出身者ばかりが一堂に会していたからでしょう。葬儀のときは出身の異なる親戚もいたため、ここまで目立ちませんでした。今回は人数も少なく、家の中での集まりだったことから、「状況のコード切り替え(situational code-switching)」が起きていたのだと思います。
ここでいう「コード」とは、複数の人が伝達に用いる言語や方言などの体系を指し、「方言」や「標準語」といった呼び方よりも中立的な用語です(ウォードハフ 1994)。「コードスイッチング」とは、話している途中で使う言語や言語スタイル(コード)を切り替えること(石黒 2013)で、主に次の3タイプがあります。
状況のコード切り替え(situational code-switching):状況や話題に応じて言語変種を切り替えること。例:友人同士ではくだけた口調でも、就職試験では改まった話し方に変える。
比喩的コード切り替え(metaphorical code-switching):感情やニュアンスを伝えるために言語形式を切り替えること。例:公務では標準語を使い、世間話になると方言に切り替える役場職員(Blom & Gumperz, 1972)。
会話のコード切り替え(conversational code-switching):一つの文の中で異なる言語変種を切り替えること。
(田中春美・田中幸子 1996)
子どもの頃、私は理由もよくわからないまま「だに」「だら」を真似して使っていました。今振り返ると、それは単に「かっこいいから」ではなく、「仲間に入りたい」という気持ちからだったのかもしれません。
参考
田中春美・田中幸子(編著) (1996) 『社会言語学への招待』ひつじ書房.
Wardhaugh, Ronald(1994)『社会言語学入門 上』田部滋・本名信行(訳)リーベル出版.
石黒圭(2013)『日本語は「空気」が決める―社会言語学入門』光文社新書.
https://www.ch-you.ne.jp/users/kamoti/iidaben.html
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[コードスイッチング] [方言]