#139 ハッシュタグは代替可能か?
最近、いろいろな場所でハッシュタグ(#)の記号を目にするようになりました。先日も、電車か駅の広告で見かけたのですが、不覚にも写真を撮りそびれてしまい、何の広告だったか思い出せずにいます(思い出したり、再会したら追記します)。
こうしたハッシュタグの広がりについて、山崎(2023)は、もともと「検索操作と結びついた情報集約機能」をもっていたハッシュタグが、「ハイパーテキスト的な機能を提供するシステムの外でも使用されるようになった」点に着目しています。つまり、リンクや検索という本来の機能から離れた場所でも、ハッシュタグが使われるようになっているということです。
山崎はその議論の中で、Zappavigna(2015)を取り上げ、ハッシュタグは単なる情報管理のための道具ではなく、対人関係的にも機能していること、さらにはユーモアや言語的遊びを含む表現として使われている点を指摘しています。
具体例として紹介されているのが、X上の次の投稿です。
寝坊しないように気をつけてください
朝から出勤できるように頑張って起きます
#寝坊したら
#それは
#それで
#面白い
(@maruhanmegahavi, 2023)
また、近畿大学国際学部の画像広告にハッシュタグが取り入れられている例についても、山崎は言及しています。この場合、ハッシュタグを使うことで、「これはソーシャルメディア上の投稿である」という設定が喚起され、見る側はソーシャルメディア的な文脈知識を下敷きに解釈することになります。山崎はこの点から、ハッシュタグを「検索性を離れながらも意味を有しているもの」として捉えられると指摘しています。
さらに山崎は、ハッシュタグを用いた表現と、他の区切り符号を用いた表現とを比較するアンケート調査も行っています。たとえば、
「今日もトレーニング! 筋トレ、継続、フィットネス」
「今日もトレーニング! #筋トレ #継続 #フィットネス」
といった表現を比べた場合、ハッシュタグを用いた方が「不自然さ」が低く評価される傾向が見られたといいます。
一方で、「#パワー#それは#力#元気#今日も頑張る」のような例では、不自然に感じる割合が変化することも示されており、ハッシュタグ的な表現にも、使い手や読み手が暗黙のうちに期待している何らかの秩序やルールがある可能性が示唆されています。
参考
山崎由佳. (2023). ハッシュタグ的表現の 「自然さ」 について: 他の区切り符号等との比較を通して. 言語科学論集, 29, 75-107.
Zappavigna, Michele. 2015. Searchable Talk: The Linguistic Functions of Hashtags. Social Semiotics 25:3: 274–291, DOI: 10.1080/10350330.2014.996948.
keywords
[ハッシュタグ] [記号] [ソーシャルメディア]